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5月10日の小話
うどん
  これは、うどんがまだ、たいへんめずらしかったころのお話でございます。
   うどんをごちそうするからというので、おしょうさまをはじめ、村の者がおおぜい、庄屋(しょうや→村長)さまのところヘよばれました。
   だれもが、うどんというものを食ベるのがはじめてで、どうして食ベたらいいのかわかりません。
   そこで、村の人たちは、おしょうさまのまねをすることにいたしました。
   みんなの注目のなか、おしょうさまは、うどんに汁をかけて、つるつるっと、すすりました。
   それを見て、ほかのものも、そのとおりまねをして、つるつるっと、すすりました。
   ところが、そのうち、おしょうさまは、
  「は、はっ、はーくしょん!」
   大きなくしゃみをしました。
   するとどうでしょう。
   うどんが、鼻のあなから飛び出して、鼻水のように、ぶらーんとさがっております。
   ほかの者も、いそいで、
  「は、はっ、はーくしょん!」
  と、やったのですが、うどんは、なかなか鼻のあなから出てきません。
   あっちでも、
  「は、はっ、はーくしょん!」
   こっちでも、
  「は、はっ、はーくしょん!」
   なんベんやってもうまく出ませんので、
  「えーい、めんどうだ」
   みんなは、うどんを手づかみにして、鼻のあなに、むりやり、ねじこんだということでございます。
おしまい