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6月5日の小話

角兵衛獅子の太鼓(かくべえじしのたいこ)
   隠居(いんきょ→仕事をやめて、老後を楽しむ人 →詳細)さんのところへ、どろぼうが入りました。
   目をさました隠居さん。
   そばにねていたこぞうさんをつついて、
  「こぞう、こぞう。どろぼうがきたから、おいだしてやれ」
   いわれたこぞうさんは、こわくなり、あわてて、ふとんをひっかぶると、
  「だんなさま、いまのは、犬でございます」
   それをきいたどろぼう。
  「ワン、ワンワン」
   隠居さんは、そばのこぞうさんをつついて、
  「こぞう、また、音がするぞ」
  と、いえば、こぞうさん、ふとんの中から、
  「あれは、ネコでございます」
   それをきいたどろぼう。
  「ニャーオ」
   隠居さんは、また、こぞうさんをつついて、
  「これ。まだ、音がするぞ」
  「あれは、ししまいでございます」
   すると、それをきいたどろぼう。
  「ピーヒャラ、ピーヒャラ」
  と、ししまいのおはやしを、はじめました。
   こぞうさんは、すっかりうれしくなって、ふとんの中から首を出すと、
「ねえ、どろぼうさん。今度は、角兵衛獅子の太鼓(かくべえじしのたいこ)を、おたのみします」
おしまい