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7月29日の小話
ネギちがい
   お殿さまが、あるとき、山おくの村に出かけました。
   この村は、大そうソバがうまいときいて、お殿さまがソバをたのみました。
  「おまちどおさまでごぜいやす」
   うまそうなソバが運ばれてきましたが、やくみ(ショウガやネギなどの調味料)がありません。
  「やくみのネギはないのか?」
   お殿さまがいわれました。
   村のひとたちは「やくみのネギ」というのが、何のことかわかりません。
  「村の大事なやくをしている、ねぎ(かんぬし)のことだろう」
  と、ねぎの手をひっぱってきました。
   でも、お殿さまはまちきれなくて、もう、ソバを食べおえていました。
  「ねぎをいかがなさいましょう?」
  「すてるのも、もったいない。首だけ出して、うめておけ」
  「はあ」
 村の人たちは、畑のすみにあなをほって、いやがるねぎ(かんぬし)を、首だけ出して、うめてしまいました。
おしまい