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5月7日の世界の昔話
  
  
  
  天の猟師オリオン
  ギリシアの昔話 → ギリシアの国情報
 むかしむかし、ギリシアの海の神さまポセイドンの子のオリオンは、月の美しいある夜、散歩に出かけました。
   オリオンは、ふと足をとめました。
   どこからか楽しそうな音楽と、それにまじって女の人たちの笑い声が聞こえてくるのです。
   オリオンは草のしげみをかきわけて、その声の方へそっと進みました。
   草のしげみのむこうには、森の中の広場がありました。
   そこでは、美しい七人姉妹がおどっています。
   長い髪を月の光にかがやかせ、ほほはバラ色です。
   あまりの美しさに、オリオンはしばらくウットリとながめていましたが、しばらくすると、娘たちを少しからかってやろうと思いました。
   そして、
  「ウォーッ!」
  と、化物のような声を出し、持っていた太いぼうをふりあげながら、七人姉妹の方へ飛び出して行ったのです。
  「きゃあ、こわい!」
   七人姉妹はたちまち青くなり、急いでほら穴へ逃げ込みました。
  「助けて! 助けてください!」
   そのほら穴は、月と狩りの女神アルテミスのいる場所でした。
   アルテミスは、銀色の服のすそを広げて、七人姉妹をかくしました。
   七人姉妹は、妖精だったのです。
   そうとは知らないオリオンは、まだふざけて、
  「ウォー! ウォー!」
  と、ほえながら、ほら穴へはいって行きました。
   すると、
  「とまれ!」
   アルテミスが、どなりました。
   その声に、オリオンはドキッとしました。
   強い魔法を持つ、アルテミスだとわかったからです。
   アルテーミスを怒らせたら、自分はどんな魔法をかけられるかわかりません。
   オリオンは一歩うしろへさがり、もう一歩さがると、ゆっくりふりむきました。
   そしてそのまま、ほら穴を飛びだし逃げて行きました。
   アルテミスはクスクス笑って、銀色のすその下にかくした七人姉妹に言いました。
  「もう怖いことはありません。さあ出ていらっしゃい」
   アルテミスは、銀色のすそを広げました。
   すると、どうでしょう。
   七羽のまっ白いハトたちが、飛びたって行ったのです。
   その美しいハトたちは、月あかりの森へ飛んで行きました。
   この様子を、ゼウスが見ていました。
   そして美しい七羽の白いハトを、いつまでも空にかざりたいと考えて、ハトたちを魔法で星にかえました。
   この星たちが、おうし座の中でキラキラとかがやくスバル座だということです。
おしまい