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5月26日の世界の昔話
  
  
  
  月の見ていた話二十六夜
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 こんばんわ。
   わたしは、高い空の上にいる月です。
   タ方から朝になるまで、いろんな国のいろんなところをながめます。
   では、ゆうべ見たことを、話してあげましょう。
   夜明けのことです。
   大きな町のどの煙突(えんとつ)も、まだ煙(けむり)をはいていません。
   だってまだ、みんな眠っている時間ですもの。
   でも、わたしはただ一つ、おきている煙突を見つけました。
   ただし煙突から出てきたのは煙ではなく、とびきり元気のいい男の子の口笛(くちぶえ)でした。
   煙突からピョコンと男の子が顔を出したとき、わたしは思わずふき出してしまいましたよ。
   だって、おでこと鼻の頭と右のほっぺが、すすでまっ黒なんですもの。
   でも、そんなことは気にしない様子で、男の子は煙突のふちに両手をかけると、いきなり大きな声でさけびました。
  「ばんざーい!」
   この子は、煙突掃除屋(えんとつそうじや)さんだったのです。
   男の子は生まれて初めて、煙突の中をてっぺんまでのぼってきたのです。
   そのときちょうど、太陽が東の空に姿を現わしました。
   男の子は、明るくなった町を見わたして言いました。
  「町がおいらを見てる!」
   そして、わたしを見あげて言いました。
  「お月さんも、おいらを見てる!」
   それから、
  「お日さまも、おいらを見てる! ばんざーい!」
   ほうきをクルクルふりまわしながら、とってもうれしそうでしたよ。
おしまい