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10月10日の世界の昔話
  
  
  
  クマとおばあさんとシャオホン
  中国の昔話 → 中国の国情報
 むかしむかし、あるところに、おばあさんと女の子がすんでいました。
   女の子の名まえは、シャオホンといいます。
   二人は、とてもびんぼうでしたが、とてもしあわせでした。
   ある年の春。
   おばあさんは、畑にダイコンのタネをまきました。
  「どっさりダイコンをつくって、どっさりシャオホンに食べてもらおう」
   おばあさんは、まがった腰をたたきながら、毎日毎日、畑の草をとり、水をまき、こやしをふりかけました。
  ♪はやく、なれなれ。
  ♪でっかいダイコン。
  ♪うんと、なれなれ。
  ♪でっかいダイコン。
   夜も昼もはたらきつづけて、やがて秋になりました。
   ところがどうしたわけか、ダイコンは、たったの三本しかはえてきません。
   おばあさんは、シャオホンにいいました。
  「いつまでガッカリしていても、ダイコンはふえやしない。一本目のほそいダイコンは、わたしが食べて、二本目の中くらいのは、となりのおばあさんにやって、三本目の太いダイコンは、シャオホンにあげようね」
   おばあさんが川で三本のダイコンをあらっていると、山のてっぺんからクマがかけおりてきました。
  「おい、そのダイコンをよこせ! よこさないと、シャオホンをたべてしまうぞ!」
  「ひぇー! はっ、はい、どうぞ」
   おばあさんは、細いダイコンをクマにあげました。
   クマは、そのダイコンを一口で食べると、
  「まだ腹がへってるぞ。それもよこせ」
   おばあさんは、中くらいのダイコンもあげました。
   クマは、そのダイコンを二口で食べると、
  「まだ腹がへってるぞ。それもよこせ」
   するとおばあさんは、太いダイコンをしっかりとかかえていいました。
  「このダイコンはシャオホンのだから、やれん」
   そのときむこうから、物売りたちがやってくるのが見えました。
  「ようし。それではこんや、シャオホンを食いにいくぞう」
   クマはどなると、あわてて山へかけあがっていきました。
   おばあさんがダイコンをかかえて、オイオイと泣いていると、そこへやってきたのは針売りです。
   つづいて、ばくちく売りと、油売りと、エビ売りと、石うすをかついだ男が、ぞろぞろやってきました。
  「おばあさん。なにを泣いているんだい?」
  「それは・・・」
   おばあさんは、いままでのことをすっかり話してしまうと、またオイオイと泣きだしました。
   針売りと、ばくちく売りと、油売りと、エビ売りと、石うすをかついだ男は、よし、よし、とうなずいて、まず、針売りがおばあさんに針をわたしました。
   それから、ばくちく売りはばくちくを、油売りは油を、エビ売りはエビを、石うすをかついだ男は石うすを、おばあさんの前にわたしました。
  「これで、なまいきなクマをやっつけてしまえ!」
  「でもなあ、こんなものもらっても・・・」
   おばあさんは家に帰ると、針と、エビと、油と、ばくちくと、石うすをほうりだして、オイオイと泣きました。
  「シャオホンや。どうしたらいいだろうね」
   シャオホンはしばらく考えていましたが、やがて元気よくいいました。
  「だいじょうぶよ。おばあさん。わたしにいい考えがあるわ」
   夜になりました。
   山のてっぺんからクマがおりてきて、シャオホンの家の前でどなりました。
  「おい。あけろ!」
   シャオホンとおばあさんは、ベッドの下にかくれてだまっています。
  「おい。あけろったら!」
   クマは、ドン! と、戸をたたきました。
   そのとたん、クマは、
  「うわっ。いててて!」
  と、とびあがりました。
   クマの手には、針がなん本もつきささっています。
   かしこいシャオホンが、針を戸にさしておいたのです。
   クマはカンカンにおこり、戸をメリメリふみやぶって、へやの中にとびこみました。
  「シャオホンは、どこだ?」
   クマは、台所をのぞきました。
   かまどには、ナベがかかっています。
   クマがナベのふたをとると、中からエビがとび出てきて、手のハサミでクマの鼻をパチン!
  「うわっ。いたたた! こいつめ。はなせえー!」
   でも、エビはクマの鼻にぶらさがって、なかなかはなれません。
   うんうんとひっぱって、やっとエビをはなすと、ナベの中にたたきつけました。
  「このエビめ。ナベでにて、くってやる!」
   クマは、まっ赤にはれあがった鼻をさすりながら、かまどに火をつけました。
   すると、かまどの中からばくちくがとび出して、
  「パパーン!」
   クマの目玉にとびこみました。
  「ウヒャー!」
   クマは目をつぶされて、おおあわてです。
  「なんにも見えん! おれの目玉はどこへいった?」
   クマは、あっちにフラフラ、こっちにフラフラ。
  ♪目玉よ、目玉。
  ♪どこにいる?
  ♪いたら、へんじをしておくれ。
   クマのへんな歌があまりにもおかしいので、シャオホンは思わず、「プッ」とふきだしてしまいました。
  「だれだ! いま笑ったのは! ははあーん、シャオホンだな」
   クマはシャオホンにむかって、ノッシノッシと近づいてきます。
  「ああ、クマがくる。シャオホン、どうしよう?」
   おばあさんは、ふるえ声でいいました。
   ところがシャオホンは、手をポンポンとたたきながら、
  「クマさんこっち。手のなるほうヘ」
  と、はやしたてるのです。
  「こいつめ。おれをバカにしくさって。いますぐくってやるぞう」
   クマはうなりながら、ノッシノッシと近づいてきます。
  「ああ、シャオホン。どうしよう? クマがくるよ」
   おばあさんは、大声でさけびました。
   クマは立ちどまると、
  「ははん。おばあさんもそこにいるな。おまえもシャオホンもくってやる」
  「やめておくれ。くうのはわたしだけにしておくれ」
   おばあさんは、手をあわせてたのみました。
   けれどクマは、
  「だめだ、だめだ。もう、かんべんできん」
  と、いうと、シャオホンにとびかかろうとしました。
   そのとき、ツルリンと足がすべって、ドタンと床にひっくりかえりました。
   かしこいシャオホンが、床に油をこぼしておいたのです。
   クマはあおむけにひっくりかえったまま、ツルツルとすべっていきます。
   どんなにおきあがろうとしてもだめです。
   ツルツルすべって、柱にぶつかりました。
   そしてぶつかったひょうしに、柱の上から石うすが落ちてきて、クマはおせんべいのようにペチャンコになりました。
   シャオホンとおばあさんは、ペチャンコになったクマをひきずって、うらの池にポチャンとなげこむと、笑いながら帰っていきました。
おしまい