
  福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 11月の世界昔話 > イワンと子ウマ
11月28日の世界の昔話
  
  
  
  イワンと子ウマ
  ロシアの昔話 → ロシアの国情報
  むかしむかし、イワンという若者が、子ウマをつれて旅をつづけていました。
   山の途中で夜になり、道がわからなくてこまっていると、運よく、ピカピカと光った金色の鳥の羽をひろいました。
  「これは、べんりだ」
   イワンは、その羽で足もとをてらしながら、ぶじに都につくことができました。
   そして王さまに、その羽をさしあげると、
  「これはめずらしい。これは火の鳥の羽だ。この羽を持っているなら、鳥のいるところも知っているだろう。つかまえてきたら、おまえをわしのけらいにしてやる」
  と、いいました。
   イワンが困っていると、子ウマが、
  「それならいい考えがあります。トウモロコシとブドウ酒をもらって、出発しましょう」
  と、いいました。
   イワンは子ウマの背中に乗って、一週間も走りつづけ、美しい花にかこまれた泉のほとりにつきました。
   トウモロコシとブドウ酒をならべて、岩のかげからようすを見ていると、どこからか火の鳥がやってきて、食べたり飲んだり、いい気持ちでねころんでしまいました。
  「しめた!」
   イワンはさっそく火の鳥をつかまえて、お城に帰りました。
   すると、王さまはいいました。
  「火の鳥がつかまえられるなら、海の女王だって連れてこられるだろう。すぐ出かけなさい」
   イワンが困っていると、子ウマがいいました。
  「おやすいご用です。サトウのおかしをもらって出発しましょう」
   イワンはまた、子ウマの背中に乗って一週間も走りつづけ、海べにあった金の船の中にサトウのおかしをおいて、物かげでようすを見ていました。
   すると海の中から、美しい女王があらわれて、船の中のサトウのおかしを食べはじめました。
  「それ、いまだ」
   イワンはうしろからとびかかって女王をつかまえて、お城に帰ってきました。
   王さまはたいへん喜んで、女王に、
  「わたしのお嫁さんになってください」
  と、いいました。
    すると女王は、
  「あなたがグラグラとにえたっている、ミルクのおふろにはいることができたら、おおせにしたがいましょう」
  と、こたえました。
   ずるい王さまは、イワンを使ってためしてみようと考え、
  「たびたびの働きでつかれただろう。ミルクのふろにはいって、ゆっくりやすむがいい」
  と、いいました。
   さあ、たいへんです。
   イワンはグラグラとにえかえっているミルクのふろの前で、まっさおになりました。
   すると子ウマが、しっぽをふろの中につっこみ、ブルッとふるわせて、ミルクのしずくをイワンのからだにかけていいました。
  「もう大丈夫。さあ、おはいりなさい」
   イワンがおそるおそるふろにはいってみると、ふしぎと、ちっともあつくありません。
   それを見た王さまは、すっかり安心して、
  「のけ! こんどはわしの番だ」
  と、いきおいよくふろに飛びこみましたが、たちまち大やけどで、死んでしまいました。
   そしてイワンはけらいたちにすすめられて、新しい王さまになり、海の女王をおきさきにして、子ウマといっしょにいつまでもなかよくくらしました。
おしまい