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むし・こんちゅうのお話し 第 6 話
カとライオン
カがライオンの所へ行って、言いました。
「ぼくはきみが怖くなんかないよ。
動物の王さまといばっているけど、きみはぼくより強くなんかない。
もし、きみの方が強いというのなら、その証拠を見せてごらん。
爪で引っ掻いたり、噛みついたり出来るって。
・・・まあ、無駄な事だけどね。
何しろぼくは、きみよりずっと強いんだから。
・・・あれ、うたがっているの。
何なら今すぐ、きみと一騎討ちしよう」
そしてすぐさま、カはライオンに襲いかかりました。
ライオンの鼻の穴のまわりの、毛のない所を狙って、ちくり、ちくりと刺したのです。
ライオンはかゆくてたまらず、自分の爪でそこをひっかいて血だらけになりました。
「こうさん、こうさん」
ライオンは、勝負をあきらめました。
カはライオンを負かしたので、
「ブウウーン」
と、勝ちどきをあげ、
「♪ブブブン ♪ブブブン」
と、勝利の歌を歌いながら、飛び立ちました。
ところがクモの巣に引っかかって、クモのえじきになってしまいました。
クモに食われるとわかった時、カは泣きべそをかいていいました。
「ライオンよりも強いこのぼくが、クモなんていう、けちな奴の為に死ぬとは。やれやれ、何て事だ」
このお話しは、強い者に勝ちながらも、ちょっとした不注意から弱い者に負けてしまう人に教えてあげるお話しです。
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