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    福娘童話集 > きょうの江戸小話 > 2月の江戸小話 > 滝のぼり 
      2月18日の小話 
        
      滝のぼり 
       「みずーい、水、水はいかがですかー?」 
  と、むかしは水を売る声が、あちこちで聞かれていました。 
   いまのように、家に水道がないむかしは、こんな商売があったのです。 
   ある日、両国橋(りょうごくばし)の上で、さむらいが何やらあわててさわいでおりました。 
   それもそのはず、さむらいのつかえているご主人から、将軍さまにさしあげる生きたコイが、さむらいのかついでいたおけの中で、ピョーンとはねると、そのまま川の中へ飛びこんでしまったのですから。 
  「たいへんなことになった、こまった、こまった」 
  と、さむらいは、うろうろ橋の上をいったりきたりしていますと、ちょうど、水売りがとおりかかり、さむらいの話をきいて、 
  「そんなことなら、あっしが、つかまえてさしあげましょう」 
  と、いうと、売り物の水を、橋の上からサラサラサラと細めに流し、コイにむかっていいました。 
  「コイやコイや、滝だよ、滝。さあさあ、のぼってこいや。コイの滝のぼりだ」 
   また、この声につられて、ほんとうにコイがのぼってきたのですから、見事なものでございます。 
      おしまい 
                 
         
        
        
       
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