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7月14日の世界の昔話
  
  
  
  魔法のつえ
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 むかしむかし、六人ののんき者が旅に出ました。
 川のそばへやってくると、雨あがりでふえた水が、ごうごうとながれています。
  「こりゃあ、へたにわたったら、水にのみこまれてしまうぞ」
 みんなはきしにたちどまって、どうしようかとなやんでいました。
 すると村の人がきて、あさいところをさっさとわたっていきましたので、みんなもまねをして、そこからわたっていきました。
 そして、むこうのきしへつくと、
  「どうだい、みんなちゃんとわたったかい?」
  と、おたがいに人数をかぞえてみました。
 ところが、六人いたはずなのに、いつのまにか五人になっています。
  「おい、一人たりないぞ」
 それというのも、みんなじぶんを数にいれないでかぞえるので、なんどやっても五人になってしまうのです。
 でもだれも、そのことに気がつきません。
  「ああ、なかまを一人なくしてしまった」
  と、みんなはかなしがってなきだしました。
 するとそこへ、一人の男がとおりかかって、
  「みなさんは、なぜ、そんなにないているのですか?」
  と、たずねました。
 みんなが、なかまを一人なくしてしまったことをはなしますと、その男は、一人たりない理由がすぐにわかりました。
 でも、みんなをからかってみたくなって、わざとむずかしい顔をしていいました。
  「じつは、わたし魔法使いなのです。もしみなさんがおれいをくださるなら、その人をとりもどしてさしあげましょう」
  「おねがいします。おれいに、銀貨を五十まいあげましょう」
  と、みんなはやくそくしました。
 するとその男は、じぶんがもっているつえをふりあげると、
  「これは、魔法のつえです」
  と、いって、みんなの背中をじゅんじゅんにたたいていきながら、
  「一人、二人、三人、四人、五人、・・・そして、六人」
  と、かぞえていきました。
  「ほら、六人になったでしょう」
 魔法使いはとくいそうに、みんなを見わたしながらそういいました。
 みんなはいなくなったなかまを、この人がとりかえしてくれたのだと思って大よろこびです。
  「おかげさまで、なかまがたすかりました」
と、なんどもおれいをいいました。
おしまい