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福娘童話集 > きょうの新作昔話 > 佐渡二郎(さどじろう)と安寿姫(あんじゅひめ)の母
2008年 11月29日の新作昔話
佐渡二郎(さどじろう)と安寿姫(あんじゅひめ)の母
新潟県の民話 → 新潟県情報
むかしむかし、平安のころ、南片辺(みなみかたべえ)の鹿野浦(かのうら)の七回り坂(ななまわりざか)の下に、佐渡二郎(さどじろう)という人買いが住んでいました。
ある日、この人買いは越後(えちご)の直江津(なおえつ)から、美しい奥方を連れてきました。
この奥方は、岩城半官正氏(いわきはんかんただうじ)という人の奥方で、夫が筑紫(つくし)へ流されてしまい、それで安寿(あんじゅ)と対王丸(ずしおうまる)という二人の子供を連れて直江津までたどりついたのです。
直江津の港から、舟旅で筑紫へ行こうとしたのです。
ところが、その港で悪い人買いにだまされて、二人の子供とは別れ別れにされてしまいました。
奥方は佐渡二郎に買われ、はるばる鹿野浦まで連れてこられたのでした。
佐渡二郎は奥方を、
「それ、飯をたけ」
「それ、薪(まき)をもってこい」
「それ、田の草を取れ」
と、朝から晩までこき使い、子どもたちの事を思って涙している奥方を見ては、ひどく怒るのです。
それで奥方はとうとう目の病にかかり、盲目(もうもく→目が見えないこと)になってしまいました。
「ええい、この役立たずが。だが、遊ばせておくわけにゃ、いかんからのう」
佐渡の二郎は目の見えない奥方に、畑の鳥追いを命じました。
奥方は、毎日畑に立って、
♪安寿(あんじゅ)恋しや、ほうやれほ
♪対玉(ずしおう)恋しや、ほうやれほ
と、歌いながら鳥を追うのです。
そんな奥方を、村の子どもまでもがバカにして、
「ほら、安寿姫が、そこにやってきたぞ」
「おらは、対王だよ。ほれ、ここまできてみろや」
などと言っては、からかったのです。
奥方はそんなことのあるたびに、無念の涙をじっとこらえていました。
それから十数年が過ぎ去り、母をさがしに安寿姫が下男(げなん)を供に、鹿野浦(からのう)へやってきたのです。
盲目になって畑で烏を追っている母を見つけた安寿姫は、
「母上、安寿でございます」
と、目に涙をいっぱいためてかけ寄りました。
しかし、
「なに安寿だと。またこの悪童(あくどう)どもが、もういいかげんにおしっ」
と、奥方は夢中で杖(つえ)を振りまわして、とうとう本物の安寿姫を殺してしまったのです。
そのあと下男から話しをきき、それが本物の安寿姫だったと知った奥方は、安寿姫のなきがらにすがって泣きくずれました。
それから奥方は、下男と一緒に安寿姫を中の川の川上にうめたのです。
そのとき目の見えない奥方の目から涙があふれて、それが川に流れ込みました。
その日から、中の川は毒の川になってしまいました。
やがて佐渡の次郎の子孫は死に絶え、その屋敷のあった場所は、草も生えない荒れ地へとかわったということです。
おしまい
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