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福娘童話集 > きょうの新作昔話 > 宝のしゃもじ
2009年 1月24日の新作昔話
宝のしゃもじ
新潟県の民話 → 新潟県情報
むかしむかし、赤玉(あかだま)という村に、次郎右衛門(じろえもん)と、おときという名の老夫婦が住んでいました。
おときおばあさんが、杉池(すぎいけ)の近くで草取りをしていると、見事な白馬が一頭、池のほとりで草を食べていました。
「はて、なんでこんなとこに、白い馬がいるんだろう?」
と、不思議に思いながらも、なおも草を取っていました。
けれど日暮れ近くなっても、白馬はまだ草を食べています。
「いったい、どこから、迷ってきたんだろうか?」
と、思いながらおばあさんが近づくと、
ザザザーーッと、いきなり池の水面から、二匹の大蛇がからみ合って出てきたのです。
「うぇー!」
おばあさんは恐ろしくて、その場で腰を抜かしてしまい、ただ一心に目をとじてお経を唱えていました。
しばらくして、おばあさんは、そっと目を開けて見ました。
すると若い男女がおばあさんの横に立っていて、男の方がおばあさんに声をかけました。
「おばあさん、おどかしてごめんなさい。じつはわたしたちは人間ではありません。わたしはこの池に住む雄蛇(おすヘビ)で、この女は立島(たつしま)の太郎左衛門池(たろじえむいけ)に住む雌蛇(めすヘビ)です。わたしたちは、たがいに愛し合っているのです。ですから、時々こうして白馬に乗って、おたがいに行ったり来たりして、逢う瀬(おうせ)を楽しんでいるのです。どうかお願いですから、この事をだれにも言わないで下さい。約束して下さるならば、このしゃもじをあげましょう。このしゃもじは、一粒の米を鍋に入れてかきまわせば一升のご飯になり、二粒入れると二升のご飯になります。ただし、かきまわしているところをだれにも見られないようにして下さい」
と、いって、一本のしゃもじを差し出すと、二人は消えてしまいました。
家に帰ったおばあさんは、とにかく言われたように米を一粒鍋に入れて、しゃもじでかきまわしてみました。
するとたちまち、鍋一杯のご飯ができあがったのです。
二人だけの暮しだったので、一日に米一粒でも余ります。
そこで余ったご飯は、こっそり海に捨てました。
するとそこへ魚がいっぱい集まってきて、海草もよく茂りました。
おかげで老夫婦は、魚や海草にも不自由しなくなりました。
ある日、おじいさんは、おばあさんにたずねました。
「なんで、こんなに食べるのに困らないんだ? わしは、どうも不思議でならん」
「わけなんか、どうだっていいでねえか。毎日こうして困らずに暮らせるんだから」
おばあさんは、ごまかしましたが、それでもおじいさんは、なんとかわけが知りたくて家中を調べました。
そしてとうとう、おじいさんは、しゃもじを見つけたのです。
「そのしゃもじ、わしにみせてくれ」
するとおばあさんは、必死になってしゃもじをかくしました。
「なんじゃい。わしにかくしだてするのか。さあ見せろ、こっちへよこせ」
「いや、これだけは、勘弁しておくれ」
おじいさんは、むりやりそれを取り上げてしまいました。
するとそのひょうしに、しゃもじは二つに割れてしまったのです。
その翌日から、この老夫婦の家は元の貧乏になってしまいました。
おしまい
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