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福娘童話集 > きょうの新作昔話 > 塩買い大黒 
      2009年 1月30日の新作昔話 
          
          
         
  塩買い大黒 
  鹿児島県の民話 → 鹿児島県情報 
      
       むかしむかし、薩摩の国(さつまのくに→鹿児島県)で、塩がとても少なくなった年がありました。 
         川内(せんだい)のあたりは特にひどくて、奉平寺(たいへいじ)というお寺でも、毎日、和尚さんも小僧も、朝から晩まで塩さがしに走り回っていました。 
         そんなある日、本堂を掃除していた小僧は、どっかりと座っている大黒さんを見ながら、うらめしそうにつぶやきました。 
        「大黒さんはよかね。塩不足で皆が困っとるちゅうに、のんびりと。だいたいおまんさまは、福を持ってくるのが仕事じゃろうが。それがなんもせんで、ちょこんと座っちょるだけやなかか。そうじゃろ、なあ、なんか言うてみい」 
         でも相手は木彫りの大黒さんですので、いくら文句を言っても返事をするわけがありません。 
        「けっ、返事もなかか」 
         小僧は腹いせに大黒さんを足でけりつけると、出て行きました。 
         さて次の日、大変なことが起こりました。 
         大黒さんの姿がどこにもないのです。 
         お寺のみんなは、あちこちを探しましたが、やっぱりどこにもありません。 
        「もしかして、泥棒にでもとられたんじゃろか?」 
        「これだけ探しても見つからんのじゃ。そうかもしれんな」 
         みんなはとうとう、探すのをあきらめてしまいました。 
         ところが、それから間もなくの事です。 
         川内の港に、塩をいっぱいつんだ船がやってきました。 
         川内の人々は大喜びで迎えましたが、だれが船を頼んだのかわかりません。 
         そこで船頭に聞いてみると、 
        「四、五日前に、川内に塩を届けてくれちゅうて、どっさり金をおいていきおった人がおったのです。変わった格好の客でな。大きな袋かついで、頭巾をかぶっとった」 
        と、首をかしげて答えるのです。 
         それを聞いた小僧は、びっくりです。 
        「その格好は、大黒さんにそっくりじゃ。まさかうちの大黒さんが」 
         あわてて寺にもどった小僧は、またまたびっくりです。 
         なんと大黒さんが、ちゃんと元の場所に座っているのです。 
         それだけではありません。 
         大黒さんの足が砂でよごれており、おまけにその砂が本堂の縁側からずっと続いているのです。 
         さらによく見ると、大黒さんのかついでいる大きな袋が、前よりも少し小さくなっているのです。 
         小僧はその場にひれ伏すと、 
        「大黒さん、この前はすまんことです。そして塩を、ありがとごわした」 
      と、手をあわせてあやまったそうです。 
      おしまい 
         
          
         
        
       
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