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福娘童話集 > きょうの新作昔話 > 長者の森
2009年 2月24日の新作昔話
長者の森
山口県の民話 → 山口県情報
むかしむかし、ある山のふもとに二軒の家がありました。
二軒の家は、どちらも貧しい炭焼きの家でした。
ある日の事、一軒の家には男の子が、もう一軒の家には女の子が生まれました。
そして二人の父親は、子供たちが大きくなったら結婚させる約束をしました。
ところがこの女の子には、山の福の神がついていました。
女の子が山へ行くと、ただの木の葉や石ころまで、みんなお金にかわってしまうのです。
そんなわけで、女の子の家はお金持ちになっていきました。
しかし男の子の家の方は、あいかわらず貧乏なままでした。
やがて二人の子供が年頃になったころ、男の子の父親はむかしの約束を思い出して、息子を婿にしてくれと女の子の家に申し出ました。
女の子の父親は約束を守り、二人は夫婦になりました。
福の神のおかげで家はますます豊かになっていき、長者屋敷といわれる屋敷には、蔵がいくつもいくつも建ち並びました。
さてそうなると、主人にはおごりが出てきました。
遊びに出て夜遅く戻っては、冷めてしまった料理を見て、
「こんな冷たいものを、食べられるか!」
と、妻をどなりつけるのです。
そこで妻は考えて、ある夜、熱いそばがきを出しました。
しかし、ぜいたくに慣れた主人は、
「なんだ、こんなまずい物!」
と、言うと、足で蹴り飛ばしたのです。
すると、ザワザワという音と共に、蔵からたくさんの穀象虫(こくぞうむし)と白い蛾(が)が出てきました。
それは主人のふるまいに怒った福の神が、米を全部虫や蛾にしてしまい、自分も立ち去って行く姿だったのです。
それからは主人は何をしても失敗ばかりで、やがて広い屋敷もなくなり、一家は行方知れずになってしまいました。
それから月日が流れて、かつての長者屋敷は森になりました。
人々はそれを「長者の森」と呼び、ぜいたくやおごった心を持たぬようにとの、戒めにしたということです。
おしまい
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