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2009年 3月27日の新作昔話
仙人の碁(ご)
和歌山県の民話 → 和歌山県情報
むかしむかし、ある木こりが高野山(こうやさん)へ木を切りに行きました。
頂上近くまでくると、見たこともないじいさんが二人で碁をうっています。
(こんな山奥で碁をうつとは、変なじいさんたちだな)
そう思いながらも、碁盤をのぞいていると、これがなかなか面白い勝負です。
碁の好きな木こりは、つい仕事の事も忘れて、その場に座り込んでしまいました。
さて、どれくらい時間がたったのか、突然つえにしていたオノの柄が、ポキリと折れました。
見てみるとオノの柄は腐っていて、着物はボロボロになっています。
(これは変だぞ)
不思議に思い、木こりはすぐに家へ引き返しました。
ところが、家に帰ってびっくり。
家にはたくさんの人が集まって、お経をとなえているのです。
入り口にいた人に聞いてみると、
「ここの主人が三年前に山で死んで、今日はその命日なんですよ」
と、いうではありませんか。
木こりはびっくりして、
「わしがこの家の主人です。朝に仕事に出かけ、今、帰ってきたところなんです。死んでなんかいません」
と、いうと、今度はその人がびっくりして、顔をじろじろながめながら、
「あんたは、顔中がひげだらけなので、どこのだれだかさっぱりわからない」
と、言うのです。
木こりが顔に手をあててみると、なるほど、ひげもじゃになっています。
そこで急いでひげをそり落し、やっとのことで、この家の主人とわかってもらいました。
この木こりはなんと三年もの間、山で碁をうつのをながめていたわけです。
また、碁をうっていたじいさんたちは、仙人だったといわれています。
おしまい
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