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福娘童話集 > きょうの新作昔話 > 赤鬼と青鬼と三つの宝 
      2013年 10月14日の新作昔話 
          
           
         
赤鬼と青鬼と三つの宝 
ジャータカ物語 → ジャータカ物語について 
       むかしむかし、インドのある山奥に、欲張りな赤鬼と青鬼がいました。 
         
 ある日の事、赤鬼と青鬼は不思議な箱と不思議な下駄(げた)と不思議な小づちという、三つの宝物を手に入れました。 
 ところが三つの宝物では、二人でうまく分ける事が出来ません。 
 そこで赤鬼が、青鬼に言いました。 
「仕方ない、今回はおれが二つでがまんしよう」 
「何が二つでがまんだ! それを言うなら一つでがまんだろう!」 
「何を言う。本当なら、三つともおれの物だ。それなのに、一つをお前にやろうと言うのだぞ。感謝して欲しいくらいだ」 
「ふざけるな!」 
「なんだ!? やる気か!?」 
 こうして二人の鬼は取っ組み合いのけんかを始めたのですが、二人の力は同じなので、いつまでたっても勝負がつきません。 
 そこで赤鬼が言いました。 
「待て待て! 同じ力のおれたちが闘ってもきりがない。それより、あの山の向こうにバラモン(→インドで最高の位の僧侶)という物知りの坊さんが住んでいるから、その坊さんに宝物の分け方を教えてもらおう」 
「わかった。そうしよう」 
 こうして二人の鬼は三つの宝物をかついで、バラモンの住んでいる山へと出かけました。 
   
赤鬼が、バラモンに尋ねます。
 
「あの、バラモンさん。 
 実は、お願いがあってまいりました。 
 この三つの宝を、おれたち二人が文句なしに分けるには、どうしたらいいのでしょうか?」 
 それを聞いたバラモンは、三つの宝物を見ると鼻で笑いながら言いました。 
「なんだ。宝と言っても、箱と下駄と小づちか。 
 こんなつまらない物の為に、どうしてけんかをするのだ?」 
 バラモンに笑われて、赤鬼はまっ赤に、青鬼はまっ青になって怒りました。 
「つまらない物なんて、とんでもない!」 
「そうです! なにしろこの箱からは、欲しい物が何でも出てきますし、この下駄は、はくと空を歩いて天に登れます」 
「そしてこの小づちは、どんなに強い敵も一振りではじき飛ばしてしまうのです」 
 それを聞くと、バラモンはニヤリと笑いました。 
「なるほどなるほど、確かにそれは素晴らしい宝だ。 
 よし、わかった。 
 それではわしが、この三つの宝をけんかのないように分けてやろう。 
 少しの間、目をつぶっていなさい」 
 赤鬼と青鬼は、言われた通りに目をつぶりました。 
 するとバラモンは宝物の下駄をはき、宝物の箱と小づちを両手に持って天へと登ったのです。 
 そして、天から赤鬼と青鬼を見おろして言いました。 
「おーい、バカな鬼ども。望み通り、公平に宝を分けてやったぞ。お前たちの宝は、どちらも0個だ。宝がなければ、けんかをする理由もないだろう」 
 赤鬼はまっ赤に、青鬼はまっ青になって怒りました。 
「ううむ、よくも、だましたな!」 
「坊さんのくせに、なんて悪い奴だ」
 
 赤鬼も青鬼は、二度とお坊さんを信用しなくなりました。 
 
 このお話しは、相手がいくら優れた人でも、知らない人を簡単に信用してはいけないと言う事を教えています。 
      おしまい 
         
          
         
        
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