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福娘童話集 > きょうの新作昔話 >ほらふき男爵 シカのサクランボウ

2014年 2月 3日の新作昔話

ほらふき男爵 シカのサクランボウ

ほらふき男爵 シカのサクランボウ
ビュルガーの童話 → ビュルガーの童話の詳細

 わがはいは、ミュンヒハウゼン男爵(だんしゃく)。
 みんなからは、『ほらふき男爵』とよばれておる。
 今日も、わがはいの冒険話を聞かせてやろう。

 わがはいが近くの森へ狩りに行った帰り道、突然大きくて立派なシカが現れた。
 獲物はすでに十分な数を仕留めていたが、これを逃がすのはあまりにももったいない。
「よし、こいつが最後の獲物だ」
  わがはいはすぐに鉄砲をかまえたが、あいにくと今までの狩りで鉄砲の玉を全て使い果たしていた。
「うーむ・・・」
 いつもならここであきらめるが、目の前のシカはあきらめるにはおしい獲物だ。
 そこでわがはいは、お弁当の残り物のサクランボウのタネを鉄砲に詰めて、
 ズドン!
と、おみまいしてやった。
 ところがシカは、そのまま逃げて行ったのだ。
 おや? 玉は確かにシカの頭へ命中したはずだが。
 やはりサクランボウのタネでは、だめであったか。

 さて、次の年。
 わがはいは再びあの森へ狩りに行って、再びあのシカに出会った。
 なぜ、同じシカだとわかったかって?
 それはだな、シカの頭から三メートルものサクランボウの木が生えており、サクランボウの実がたくさん実っていたからじゃ。
 ズドン!
 もちろんわがはいは、今度はちゃんとした鉄砲の玉でシカを仕留めた。
 いやはや、シカのサクランボウのおいしかったこと。
 この次は、モモのタネで試してみようか。

 今日の教訓は、『鉄砲の玉がなかったら、果物のタネで撃て』だ。
 なに? わがはいの教訓は、おかしなものが多いだと?
 まあ、今は分からぬとも、いずれ分かる時がくるであろう。

 では、また次の機会に、別の話をしてやろうな。

おしまい

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