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アリスインワンダーランド
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第 9話  

不思議の国のアリス
イラスト 「夢宮 愛」  運営サイト 「夢見る小さな部屋」

水キセルの毛虫

 森に逃げ込んだアリスの体は、さっき食べたクッキーのせいで、まだまだ小さくなっていきます。
 そして花ぐらいの大きさになったところで、小さくなるのが止まりました。
「今度は、小さくなり過ぎたわ。
 なかなか、元の大きさには戻れないわね。
 体の大きさを変えるには、また何かを食べるか飲むかしないといけないけど」
 アリスは、あたりの花や草を見まわしました。
 しかし周りには、食べたり飲んだり出来る物が何も見つかりません。
 アリスの目の前に、アリスと同じくらいの大きさキノコが生えています。
「上に登れば、何か見つかるかも」
 アリスはつま先立ちになって、キノコの上をのぞいてみました。
 するとアリスの目が、大きな青い毛虫の目とバッタリ出会いました。
 毛虫はキノコの上で腕組みをしながら、長い水キセルを気持ちよさそうふかしています。
 毛虫とアリスはしばらくだまったまま、にらめっこをしていました。
 それでもとうとう毛虫は口から水キセルを取って、だるそうな声で言いました。
「お前は、だれだ?」
 初めて会った相手に、こんな言い方をされると気やすく話が出来そうもありません。
 アリスは、きまりが悪くなりながらも答えました。
「それが、あたしにもよくわからないんです。
 でも、けさ起きたときは、自分があたしだってことがわかっていたんです。
 それからあと、何度もあたしは、色々なあたしに変わったらしいんです」
「いったい、何の事を言っているんだね? 分かるように説明しなさい」
「それが、簡単に説明出来そうもないんです。
 とにかく、今のあたしはあたしじゃないんです。
 わかるでしょう?」
「わからんね。」
「一日のうちに何度も大きさが変わったんで、頭がこんがらがってしまってるんです。
 あなたもそのうちにさなぎに変わって、いつかはチョウチョウになるんでしょう?
 自分の姿が変わってしまえば、あなたもあたしの気持ちがわかると思うわ」
「いいや、そんな事にはならないよ」
「ならないって、チョウチョウに?
 それとも、気持ちが?
 気持ちなら、あなたとあたしの性格は、まるで違うのかもしれないわね」
「ところで、お前はだれだい?」
 毛虫は、また話を元に戻しました。
 アリスはなんだか腹が立って、毛虫に言いました。
「人が誰かとたずねる前に、まずあなたから先に名のるべきだと思うわ」
「それは、なぜだね?」
「えっ? それは・・・」
 アリスは、ぐっと詰まってしまいました。
 なぜ先に名のらないといけないのか、アリスにもわかりません。
「もういいわ。じゃあ、さようなら」
 アリスは馬鹿馬鹿しくなって、さっさと行きかけました。
 すると毛虫が、後ろから呼び止めました。
「これ、かんしゃくを起こすんじゃないよ。かんしゃくを起こすと、大事なことを聞きそびれるよ」
「かんしゃく?!」
 確かにアリスはかんしゃくを起こしていたので、ここはぐっとがまんしてたずねました。
「いいわ。最後までつきあってあげるから、大事なことを教えて」
 すると毛虫はしばらくの間、何も言わずに水キセルをプカリプカリとふかしていました。
 そしてやっと水キセルから口をはなすと、アリスに言いました。
「お前は何度も大きさが変わったと言っていたが、どのくらいの大きさが本当の大きさだね?」
「それが、本当の大きさが思い出せないんです。
 なにしろ、何度も何度も大きさが変わったから」
「では、どれくらいの大きさになりたいのだね?」
「べつに、どれくらいの大きさって事はないけど。
 でも出来たら、もうちょっと大きくなりたいわ。
 7センチのおチビちゃんじゃ、いくらなんだってひどすぎるわ」
「どうして? 7センチは、実にけっこうな大きさじゃないか」
 毛虫は怒った声で言って、まっすぐに立って見せました。
 毛虫の大きさはちょうど7センチで、自分が7センチであることに誇りを持っていたのです。
 アリスは、少しあわれっぽい声で言いました。
「そんな事を言ったって、あたし、こんな高さにはまだなれてないのよ」
 でも心の中では、
(ここの人たち、みんなすぐに怒り出すのね)
と、思いました。
「まあ、そのうちになれてくると思うが、大きさを変えたいのなら、大事なことを教えてやろう」
 毛虫はそう言って、また水キセルを口にくわえると、プカリプカリとふかしはじめました。
 アリスは毛虫の方から口を開くまで、しんぼう強く待ちました。
 やがて毛虫は水キセルから口をはなすと、二種類のキノコを指さして言いました。
「一方は、お前を大きくしてくれる。もう一方は、お前を小さくしてくれる」
「あのキノコを食べれば、体の大きさが変わるの? 大きくなるのは、どっちのキノコ?」
「さあね」
 毛虫はそういうと、どこかへ行ってしまいました。

おわり

続きは第10話、「ヘビになったアリス?」

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不思議の国のアリス

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