|
|
福娘童話集 > 百物語 > 二月
(移転中)7月1日の百物語
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
投稿者 「りっきぃの夜話」 りっきぃの夜話
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
投稿者 「櫻井園子」 櫻井園子エス代表 《櫻井園子キャンドルWEB販売》
耳なし芳一
無耳芳一
・日本語 ・日本語&中国語 ・日本語&スペイン語 ・スペイン語
むかしむかし、下関(しものせき→山口県)に、阿弥陀寺(あみだじ→真言宗の寺)というお寺がありました。
到好久以前、下關(地名現山口縣)有一個阿弥陀寺。
そのお寺に芳一(ほういち)という、びわひきがいました。
這廟裡有個喊芳一會彈琵琶的。
芳一は幼い頃から目が不自由だった為に、びわのひき語りを仕込まれて、まだほんの若者ながら、その芸は師匠の和尚(おしょう)さんをしのぐほどになっていました。
芳一小時候眼睛就瞎了、就邊談琵琶邊港書、雖然還只是條年輕小夥子、已經比教他的師傅還精通了。
阿弥陀寺の和尚さんは、そんな芳一の才能(さいのう)を見込んで、寺に引き取ったのでした。
阿弥陀寺主持也是看準他這點、就幫芳一拉到自己廟裡面來。
芳一は源平(げんぺい)の物語を語るのが得意で、とりわけ壇ノ浦(だんのうら)の合戦のくだりのところでは、その真にせまった語り口に、誰一人、涙をさそわれない者はいなかったそうです。
芳一最會港的就是源式和平家之間、特別是港到壇浦之戰這段、哪個都是落眼睛水。
そのむかし、壇ノ浦で源氏と平家の長い争いの最後の決戦が行われ、戦いにやぶれた平家一門は女や子どもにいたるまで、安徳天皇(あんとくてんのう)として知られている幼帝(ようてい)もろとも、ことごとく海の底に沈んでしまいました。
到好久以前、到壇浦、源平兩家開始決戰、平家作為戰敗方、不僅女的和小孩、包括當時的幼帝、安德天皇一起、全部沈到海裡面去了。
この悲しい平家の最後の戦いを語ったものが、壇ノ浦の合戦のくだりなのです。
壇浦之役港的也就是平家滅亡的最後。
ある、蒸し暑い夏の夜の事です。
有一條好熱的夏天晚上
和尚さんが法事で出かけてしまったので、芳一は一人でお寺に残ってびわのけいこをしていました。
主持有事出去、就喊芳一一個人留到廟裡面練琵琶。
その時、庭の草がサワサワと波のようにゆれて、縁側(えんがわ)に座っている芳一の前で止まりました。
這個時候院裡面的草就動、像條波浪樣的、停就停到芳一面前的。
そして、声がしました。
就開始做聲了
「芳一! 芳一!」
芳一!芳一!
「はっ、はい。どなたさまでしょうか? わたしは、目が見えませんもので」
你是那個?我眼睛看不到。
すると、声の主は答えます。
聲音的主人就港
「わしは、この近くにお住まいの、さる身分の高いお方の使いの者じゃ。殿が、そなたのびわと語りを聞いてみたいとお望みじゃ」
我是服侍住到這附近的貴人的、老爺港要聽你的琵琶
「えっ、わたしのびわを?」
我的琵琶?
「さよう、やかたへ案内するから、わしの後についてまいれ」
沒錯、你就跟到我後面、我幫你帶路。
芳一は身分の高いお方が自分のびわを聞きたいと望んでおられると聞いて、すっかりうれしくなって、その使いの者について行きました。
芳一一聽對方是條貴人、自己也是高興、就跟到後面走。
歩くたびに、『ガシャッ』、『ガシャッ』と音がして、使いの者は、よろいで身をかためている武者だとわかります。
走到時候發出盔甲的摩擦聲、芳一就曉得了這是條帶甲的武士。
門をくぐり広い庭を通ると、大きなやかたの中に通されました。
進門過了大院、這就到屋裡面了。
そこは大広間で大勢の人が集まっているらしく、サラサラときぬずれの音や、よろいのふれあう音が聞こえていました。
茶室裡面像是聚了好多人、聲音好雜。
一人の女官(じょかん→宮中に仕える女性)が、言いました。
這時也是一個僕人跟芳一港
「芳一や。さっそく、そなたのびわにあわせて、平家の物語を語ってくだされ」
就喊芳一現在就可以開始了。
「はい。長い物語ゆえ、いずれのくだりをお聞かせしたらよろしいのでしょうか?」
全部聽完是有點長、具體是那一段?
「・・・壇ノ浦のくだりを」
壇浦之役
「かしこまりました」
我曉得了
芳一は、びわを鳴らして語りはじめました。
芳一這就開始了
ろをあやつる音。
舟に当たってくだける波。
弓鳴りの音。
兵士たちのおたけびの声。
息たえた武者が、海に落ちる音。
划船聲
浪撞到船上的聲音
拉弓聲
嘶吼聲
死者的落水聲
これらの様子を、静かに、もの悲しく語り続けます。
幫這些樣子全部都表現出來了。
大広間は、たちまちのうちに壇ノ浦の合戦場になってしまったかのようです。
茶室裡面合戰就像是到發生一樣。
やがて平家の悲しい最後のくだりになると、広間のあちこちから、むせび泣きがおこり、芳一のびわが終わっても、しばらくは誰も口をきかず、シーンと静まりかえっていました。
港到最後、茶室裡面都是哭聲、芳一彈完了琵琶、也是沒人港話、四周都是靜到的。
やがて、さっきの女官が言いました。
過一陣、僕人也就開口了
「殿も、たいそう喜んでおられます。
良い物を、お礼に下さるそうじゃ。
されど、今夜より六日間、毎夜そなたのびわを聞きたいとおっしゃいます。
明日の夜も、このやかたにまいられるように。
それから寺へもどっても、この事は誰にも話してはならぬ。
よろしいな」
也是港老爺開心
喊芳一幫東西收到
這之後六天、你每天晚上還都是要來
所以明天晚上、你還是要到這裡。
回去之後、也莫幫這個事跟那個港
「はい」
芳一也是答應了
次の日も、芳一は迎えに来た武者について、やかたに向かいました。
第二天武士也是一樣的來接人
しかし、昨日と同じ様にびわをひいて寺に戻って来たところを、和尚さんに見つかってしまいました。
但是這事被住持發現之後、
「芳一。今頃まで、どこで何をしていたんだね?」
「・・・・・・」
「芳一!」
「・・・・・・」
就一直問芳一是去了哪裡
芳一也是甚麼都不港
和尚さんがいくらたずねても、芳一は約束を守って一言も話しませんでした。
也是答應了別個要保密
和尚さんは芳一が何も言わないのは、何か深いわけがあるに違いないと思いました。
住持也看到出來這裡面可能是有甚麼東西
そこで寺男(てらおとこ→寺の雑用係)たちに、芳一が出かけるような事があったら、そっと後をつけるようにいっておいたのです。
就交待人、芳一出去之後、就到他後面盯到。
そして、また夜になりました。
又到晚上了
雨が、激しく降っています。
下好大的雨
それでも芳一は、寺を出ていきます。
芳一還是去了
寺男たちは、そっと芳一の後を追いかけました。
被交待的那些人就跟到芳一
ところが目が見えないはずの芳一の足は意外にはやく、やみ夜にかき消されるように姿が見えなくなってしまったのです。
不過這瞎子走路也是快、夜路走兩踋就看不到人了。
「どこへ行ったんだ?」
不曉得去哪裡了
と、あちこち探しまわった寺男たちは、墓地へやってきました。
這就開始到處邏、最後也是摸到墳地
ビカッ!
聲響
いなびかりで、雨にぬれた墓石が浮かびあがります。
雷一劈、就看到周圍都是被打溼的墓碑
「あっ、あそこに!」
看那邊!
寺男たちは、驚きのあまり立ちすくみました。
廟裡面夥計一看全部定到哪裡。
雨でずぶぬれになった芳一が、安徳天皇の墓の前でびわをひいているのです。
全身上下溼透的芳一就到安德天皇陵前面彈琵琶。
その芳一のまわりを、無数の鬼火が取り囲んでいます。
旁邊還圍到起一排鬼火。
寺男たちは芳一が亡霊(ぼうれい)にとりつかれているにちがいないと、力まかせに寺へ連れ戻しました。
都覺得芳一是被亡魂附身、這就強行拉到他回廟裡面。
その出来事を聞いた和尚さんは、芳一を亡霊から守るために、魔除けのまじないをする事にしました。
主持曉得是這個、就幫芳一做法除靈。
その魔除けとは、芳一の体中に経文(きょうもん)を書きつけるのです。
幫芳一身上寫滿經文
「芳一、お前の人なみはずれた芸が、亡霊を呼ぶ事になってしまったようじゃ。
芳一你才能不同與常人、這就被亡靈相中了。
無念の涙をのんで海に沈んでいった、平家一族のな。
就是無奈沈到海裡面的平家一族。
よく聞け。
你聽到
今夜は誰が呼びに来ても、決して口をきいてはならんぞ。
到晚上那個來喊你、千萬都莫在開口了。
亡霊にしたがった者は、命を取られる。
你在跟他們走到一起、自己也要米命。
しっかり座禅(ざぜん)を組んで、身じろぎひとつせぬ事じゃ。
就打坐到原地、動都莫動一下。
もし返事をしたり声を出せば、お前は今度こそ殺されてしまうじゃろう。
你若是做聲了、今晚肯定要死。
わかったな」
和尚さんはそう言って、村のお通夜に出かけてしまいました。
和尚港完、就去村子裡面守夜去了。
さて、芳一が座禅をしていると、いつものように亡霊の声が呼びかけます。
亡靈這天也是來喊芳一了
「芳一。芳一。迎えにまいったぞ」
芳一、芳一、我來接你了
でも、芳一の声も姿もありません。
芳一甚麼都當做米聽到
亡霊は、寺の中へ入ってきました。
亡靈就進到廟裡頭了
「ふむ。・・・びわはあるが、ひき手はおらんな」
恩、這琵琶是到、人倒是不見了。
辺りを見回した亡霊は、空中に浮いている二つの耳を見つけました。
亡靈就到廟裡開始步、這就看到天上飄到兩只耳朵。
「なるほど、和尚のしわざだな。
さすがのわしでも、これでは手が出せぬ。
仕方ない。
せめてこの耳を持ち帰って、芳一を呼びに行ったあかしとせねばなるまい」
原來是主持佈置好了
這麼到是我也米辦法了
也是幫這兩隻耳朵提回去
當個我來取人的證明。
亡霊は芳一の耳に、冷たい手をかけると、
バリッ!
その耳をもぎとって、帰って行きました。
那兩個手就幫耳朵一捏
耳朵就過著取走了
そのあいだ、芳一はジッと座禅を組んだままでした。
芳一也是動也不動、就一直坐到
寺に戻った和尚さんは芳一の様子を見ようと、大急ぎで芳一のいる座敷へ駆け込みました。
和尚一回廟也是急到看芳一、就急忙往芳一打坐的地方跑。
「芳一! 無事だったか!」
問他人還好吧。
じっと座禅を組んだままの芳一でしたが、その両の耳はなく、耳のあったところからは血が流れています。
這就看到坐到禪的芳一、兩隻耳朵都不見啦、原來有耳朵的地方、都是一攤血。
「おっ、お前、その耳は・・・」
和尚さんには、全ての事がわかりました。
主持也是全部曉得了
「そうであったか。
耳に経文を書き忘れたとは、気がつかなかった。
何と、かわいそうな事をしたものよ。
也是發現自己忘記幫耳朵上面寫經文了
也是替芳一著孽
よしよし、よい医者を頼んで、すぐにも傷の手当てをしてもらうとしよう」
這也快喊醫生
芳一は両耳を取られてしまいましたが、それからはもう亡霊につきまとわれる事もなく、医者の手当てのおかげで傷も治っていきました。
耳朵雖港是著取走了、但之後也是米再受到亡靈甚麼糾纏、拜醫生、傷也是米到大礙。
やがて、この話は口から口へと伝わり、芳一のびわはますます評判になっていきました。
這事後面大家也都曉得了、也是幫芳一的琵琶過吹神了。
びわ法師の芳一は、いつしか『耳なし芳一』と呼ばれるようになり、その名を知らない人はいないほど有名になったという事です。
琵琶法師這個稱號、也變成無耳芳一、後面是米人不曉得了。
おしまい
结束
(回到上一页)
|
|
|