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8月11日の日本民話
キツネ玉
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むかしむかし、あるお寺に、とてもかしこい小僧さんがいて、山に住むキツネの巣穴から『キツネ玉』を盗み出したのです。
『キツネ玉』とは、この辺りに住むキツネの宝物で、これがないとキツネは化ける事が出来ません。
小僧さんは手に入れたキツネ玉を自分のつづらに入れて、大事に隠し持っていました。
ある日の事、小僧さんがお寺の用事で出かけているすきに、小僧さんのお母さんが訪ねてきて、
「息子の洗濯物を、取りに来ました。
息子は洗濯物を、つづらの中に入れているはずです。
すみませんが、つづらを出してくださいな」
と、和尚さんに頼んだのです。
「それはそれは、ご苦労さまです」
和尚さんが小僧さんのつづらを持ってくると、お母さんはつづらの中にキツネ玉があるのを見てニヤリと笑いました。
そしてキツネ玉を洗濯物の中に隠し入れると、洗濯物と一緒に持ち帰ったのです。
さて、それからしばらくして、用事をすませた小僧さんが帰ってきました。
「和尚さま、ただいまもどりました」
「ああ、ごくろうさま。そう言えばたったいま、お前のお母さんがお前のつづらの中から洗濯物を持って帰ったよ」
「おっかさんが? はて、そんな約束はしていないのに。・・・もしや!」
小僧さんはあわてて、つづらの中を調べました。
するとやっぱり、小僧さんが隠していたキツネ玉がないのです。
「キツネのやつ、玉を取り返しに来たんだな。
しかし、あの玉がないと、キツネは化けられないはず。
それがおっかさんに化けたとなると、タヌキにでも玉を貸してもらったのかな?
さて、どうやって取り返そうか?」
しばらく考えた小僧さんは、ある名案を思いつくと、稲荷大明神(いなりだいみょうじん)のところへ行って神主(かんぬし)さんが祝詞(のりと)をあげる時に着る装束(しょうぞく)をかりて、山にあるキツネの巣穴へと行きました。
キツネの巣穴にやってきた小僧さんは、物々しい声で言いました。
「こら! この穴に住むキツネよ。はやく出てこい!」
するとキツネがあわてて出てきて、神主さんの装束を着た小僧さんに頭を下げました。
「へぇ、へぇー。これは神主さま。この様なところへ、一体何のご用でしょうか?」
「聞くところに寄ると、お前は大事なキツネ玉を寺の小僧に取られたそうじゃが、それは本当か?」
「はっ、はい。しかしもう、取り返しましたでございます」
「本当か?」
「本当でございます」
「よし、それなら、取り返した玉を見せてみろ」
「はい」
キツネは巣穴に戻ると、取り返したキツネ玉を持ってきました。
「なるほど。しかしそれは、本物か?」
「はい、本物でございます。お疑いなら、手にとってお調べ下さい」
「よし、では」
小僧さんはキツネ玉を受け取ると、そのキツネ玉を使ってキツネの苦手な犬に化けました。
「ワンワンワンワン!」
小僧さんが化けた犬にほえられたキツネはあわてて巣穴に飛び込み、小僧さんはそのすきにキツネ玉を持って帰ったという事です。
おしまい
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