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9月17日の日本民話
カッパのばあさん
愛媛県の民話 → 愛媛県情報
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むかしむかし、ある村の庄屋(しょうや)の奥さんは、男でもかなわない力持ちとして有名でした。
ある年の夏の終わり頃、庄屋の奥さんは用事があって町まで出かけていきました。
その日の日暮れ、用事をすませた奥さんが途中の川のほとりまで帰ってくると、小さな男の子が二人で水遊びをしていました。
「こら、こんなに遅くまで遊んでおって。どこの子じゃ?」
奥さんがたずねると、男の子はだまって奥さんが帰る村の方を指さしました。
「それじゃ、途中まで一緒に帰ろうか」
奥さんが心配していうと、男の子は首をふって、
「疲れたから、歩くのはいやじゃ」
と、言うのです。
「それじゃ、あたしがおぶってやるから、二人とも背中につかまりな」
そう言って奥さんがかがむと、子どもたちは反対の方へ逃げ出そうとしました。
それに気づいた奥さんは、あわてて二人の腕をつかまえました。
「こら、なぜ逃げる。こんなところで遅くまで遊んでおったら、カッパにさらわれるぞ。このあいだも、女の子がカッパに悪さをされたというのに」
カッパと聞いて、二人の男の子はびっくりした顔をしましたが、すぐに奥さんに言いました。
「実はおいらたち、カッパだよ」
それを聞いて、今度は奥さんがびっくりです。
そのすきにカッパたちは逃げ出そうとしますが、奥さんに腕を強くつかまれているので逃げる事が出来ません。
奥さんは腕をにぎっている手に力を入れると、怖い顔で言いました。
「悪さをしたのは、お前たちか! 二度と悪さが出来んように、こらしめてやる!」
するとカッパは、泣きながら言いました。
「あいててて。腕がちぎれる。もうイタズラはせんから、ゆるしてくれ」
「本当か!?」
「ああ、イタズラは二度とせん。それどころか、川で子どもが遊んでおぼれたら助けてやる」
「・・・よし、約束だぞ!」
奥さんは、カッパをにぎっている手をはなしてやりました。
次の日の朝の事です。
奥さんが家の軒下(のきした)を見ると、小さな川魚が三、四匹、クギにつるしてあり、その横に大きなお皿が一枚置いてありました。
「あのカッパが、お礼に持ってきたのかな?」
それからも川魚は毎朝同じように、軒下のクギにつるされました。
ある日、庄屋さんが、
「クギをもっと大きな物にしたら、もっと大きな魚を持ってくるかもしれんぞ」
と、言って、クギをシカの角と取り替えました。
するとカッパはそれっきり、魚を持ってこなくなりました。
なぜならカッパは、シカの角が大きらいだからです。
そして最初の日にカッパが置いていった大皿は『カッパ皿』と名づけられて、庄屋の家の家宝(かほう)として大切にされました。
奥さんはそれから三十年も長生きをして、「力持ちのカッパばあさん」とよばれて死ぬまで村の子どもたちにしたわれていたという事です。
おしまい
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