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      第 21話 
          
          
         
おいつぼの滝 
和歌山県の民話 → 和歌山県情報 
       
      ・日本語 ・日本語&中国語 
      
      
       むかしむかし、上神野(かみこうの)の庄屋さんが病気になったので、庄屋の娘は谷村の観音さまに毎朝お参りをして、病気の全快をいのりました。 
 ある晩、娘の夢の中に観音さまがあらわれて、 
「山の大ザルがお前を嫁にしようとねらっているから、気をつけなさい。もし大ザルがやってきたら、水がめの中にかくれるのですよ」 
と、言いました。 
 それから二、三日後、娘が家でごはんの用意をしていると、大きな山ザルが戸を破って入ってきました。 
 そこで娘はお告げの通り、そばにあった空の水がめの中にかくれました。 
 ところが大ザルは、すぐに娘を見つけて、水がめになわをかけると、ひょいと肩にかついで外に出ていきました。 
 娘は、恐ろしくてたまりません。 
 ためしに水がめのふたを押し上げてみると、なわがゆるんで、ふたが開きました。 
 外をのぞいてみると、サルは川のふちを歩いています。 
 そこで娘は名案を思いつき、頭にさしてあるカンザシを抜くと川の中にほうり込んで、サルにむかって言いました。 
「わたしの大事なカンザシが川に落ちてしまったわ。あのカンザシをひろってくれたら、何でも言うことを聞いてあげるよ」 
 サルは大喜びで、水がめをかついだまま川の中へ飛び込もうとしたので、娘は、 
「わたしをかついだままでは重すぎるわ。わたしはここで待っているから、早くひろってきて」 
と、いって、水がめから飛び出しました。 
 サルは空の水がめを背負ったまま川の中へ飛び込んだので、水がかめの中へ流れ込んで、そのまま滝つぼの底に消えてしまいました。 
 娘は観音さまに感謝して、その後も毎朝、観音さまにお参りしました。 
 すると数日後には、庄屋さんの病気はすっかりなおったのです。 
 大ザルがおぼれ死んだあの滝は、その後『おいつぼの滝』と呼ばれているそうです。 
       
      おしまい 
         
         
         
        
 
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