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第 123話

火太郎と長太郎

火太郎と長太郎
島根県の民話島根県情報

日本語 ・日本語&中国語

 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
 二人には子どもがいないので、二人とも子どもがほしくてたまりません。
 そこで毎日、近所の氏神(うじがみ→土地の神さま)さまにおまいりして、
「氏神さま。どんな子どもでもいいから、わしらに子どもをさずけてください」
と、おがんでいました。

 ある日の事、おばあさんがかまどで火を燃やしていると、
「おばあさん、おばあさん」
と、どこからか人のよぶ声がします。
(はて、誰がいるのかな?)
 おばあさんがあたりをキョロキョロ見回していると、なんとかまどの火の中から男の子が飛び出してきたのです。
「うひゃー! おじいさん! おじいさん!」
 おばあさんはあわてて、おじいさんをよびました。
「なんじゃ、そんなにあわてて。・・・おおっ、子どもがおる! こりゃきっと、神さまがさずけてくださったにちがいない」
 おじいさんも、ビックリするやらよろこぶやら。
 そして火からうまれた子どもに、火太郎(ひたろう)という名前をつけました。

 さて、おじいさんとおばあさんの子どもになった火太郎は、ご飯を一杯食べると一杯分だけ、ご飯を二杯食ベると二杯分だけ大きくなりました。

 ある日、おじいさんが山からもどってくると、えんがわに大きな柱が立っています。
(はて? こんなところに、柱があったのかな?)
と、不思議に思っていたら、柱が動いて上の方から、
「おじいさん、おじいさん」
と、よぶ声がするのです。
 ビックリして上を見上げると、なんとそこには大きな男の子が立っていて、
「わしは長太郎(ながたろう)と言う者だ。神さまの言いつけで、ここへやってきた」
と、言ったのです。
「なんともありがたい。火太郎に続いて、こんな大きな子どもまでさずけてくださるなんて」
 おじいさんもおばあさんも、またまた大喜びで、二人の子どもをいっしょうけんめいかわいがりました。
 二人とも力が強くて、大変な山仕事も、あっという間にかたづけてしまいます。
 それに悪い事が大嫌いで、ある日、お百姓さんをこまらせている(さむらい)がいると、すぐに飛んでいってやっつけました。
 ところが次の日、子どもたちの留守に殿さまの家来たちがたくさんやってきて、
「わしらの仲間が、ひどい目にあった。お前の二人の子どもを出せ。いやならお前を連れていく」
と、言いました。
「だめだ、大切な子どもたちを渡せるものか!」
 おじいさんが断ると、家来たちはおじいさんをしばりあげてお城に連れていきました。

 さて、その事をおばあさんから知らされた火太郎と長太郎は、すぐにお城へ行って、
「どうかおじいさんを、返してください」
と、殿さまに頼みました。
 すると、殿さまは、
「よし、じじいの命は助けてやろう。そのかわり、お前たちは死刑だ」
と、言って、長太郎をろう屋に閉じ込めると、火太郎を広場に連れていきました。
「こいつを、火あぶりにしろ」
 殿さまの命令で火太郎は木にしばりつけられると、足の下にまきがつみあげられました。
「それっ!」
 まきに火がついて、まっ赤な炎がメラメラと火太郎をつつみます。
 でも火の中から生まれた火太郎は平気で、ニコニコしながら殿さまを見下ろしています。
「な、なんだ。もっと火を燃やすんだ!」
 殿さまの命令で、まきがどんどんくべられましたが、火太郎はますますニコニコしながら殿さまを見下ろしていました。
 その時、ろう屋から大きな音がして、長太郎が飛び出してきたのです。
 大男の長太郎には、ろう屋をこわすぐらい簡単な事です。
 それを見て、さすがの殿さまも怖くなり、
「二人とも許す。だから城を、こわさんでくれ」
と、泣いてあやまったそうです。

おしまい

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