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第 131話
エビとタコとフグのおどり
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むかしむかし、エビとタコとフグが海から地上へ引っ越ししようと、浜辺へと出てきました。
「やっぱり、地上は気持ちがいいな」
と、エビが言いました。
「本当に。こうやって風に吹かれるのも悪くない」
と、タコが言いました。
「そうそう。お日さまがあたたかいや」
と、フグが言いました。
するとそこへカラスが飛んで来て、マツの木の上から、
「とって食おう。とって食おう」
と、鳴きました。
エビとタコとフグはビックリして、カラスに言いました。
「どうか、とって食うのはかんべんしてください」
「いいや、かんべん出来ない。海の生き物が地上へ引っ越しなんて、なまいきだ」
「それでは、じまんのタコおどりを見せるから、食うのだけはかんベんしてください」
「わたしも、エビおどりを見せますから」
「そいつは、おもしろそうだ。それなら、一匹ずつおどってもらおう」
「それでは、まずわたしから」
エビが前に進み出て、飛びはねながら歌いました。
♪海の上には
♪すてきな三日月さま
♪ピョンとはねれば
♪なみがちる
その姿はまるで、海の上にうかんだ三日月にそっくりです。
「いいぞ、いいぞ」
カラスは、大喜びです。
今度はタコが進み出て、近くのマツの木に足を一本かけました。
♪まがったマツに、まっすぐな竹
♪パッと開いた、ウメの花
♪松竹梅が、
♪風にゆらゆら、さいてちる
タコは歌いながら、のこりの足を広げておどりました。
それはまるで、風にゆれるウメの花にそっくりです。
「いいぞ、いいぞ」
カラスは、これまた大喜びです。
「では、次はフグの番だな」
「・・・・・・」
「どうした? はやくおどれ」
体の丸いフグは、エビやタコのように体をくねらせておどる事が出来ません。
フグは、小さな声で言いましした。
「わたしはごらんの通りの体で、おどりは出来ません。どうか、かんべんしてください」
「だめだ。何も出来ないのなら、お前を食うぞ」
カラスが言うと、フグはしかたなくひっくり返って歌を歌いました。
♪フグにおどって見せろとは
♪それはあんまり、無理難題
♪フグに出来る事はと言えば
♪大きな、大きな、ふくれつら
フグはそう言って、大きくふくれてみせました。
しかしカラスは、なっとくしません。
「だめだ、だめだ。ただふくれるだけじゃ、おどりじゃない!」
するとフグが、かくごを決めて言いました。
「それではどうぞ、わたしを食べてください。ただし、フグの毒にあたっても知りませんよ」
それを聞いて、カラスはハッと気がつきました。
フグの体にはおそろしい毒があって、フグを食べた仲間が何羽も死んでいるのです。
「わかった、わかった。お前のおどりもなかなかおもしろかったから、かんべんしてやろう」
そしてカラスは、
「とって食わねえ、とって食わねえ」
と、鳴きながら飛んで行きました。
「やれやれ、助かった。もう地上へ引っ越しするのはやめだ。やっぱり海へ帰ろう」
エビとタコとフグは、あわてて海の中へもどって行きました。
おしまい
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