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第 133話
もちはこわい
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むかしむかし、ある山の村の婿(むこ)さんが、初めて山をおりて嫁さんの家へ行きました。
嫁さんの家では婿さんにごちそうしてやろうと、おもちをつきはじめました。
するとそこへ近所の家の小さい子どもがやってきたので、家の人が、
「だめだめ。これは、こわい物だ。危ないから、あっちへ行っていろ」
と、言ったのです。
それは子どもを追い返すために言ったのですが、それを聞いた婿さんは、おもちが本当にこわい物だと思いこんだのです。
「さあ、出来た。婿どの、遠慮しないで、どんどん召し上がってくださいな」
そう言っておかみさんがお皿に乗せて持ってきた物は、おもちをあんこで包んだぼたもちでした。
それを見た婿さんは、
(やや、なんてまっ黒い物なんだ。これはきっと、バケモノにちがいない)
と、思って、ガタガタとふるえたまま食べないでいました。
するとおかみさんは婿さんがお腹いっぱいなのだと思い、帰る時にそのぼたもちをふろしきに包んでお土産に持たしてくれました。
「これ、持って帰るのか?」
「ええ、えんりょなく、持って帰ってくださいな」
「・・・はあ」
婿さんは仕方なくぼたもちのふろしきを受け取りましたが、途中で長い竹ざおを拾うとその竹ざおの先にふろしきをぶらさげました。
「よし、これで大丈夫だ」
ところが竹ざおの先にぶらさげたふろしきが、だんだん下へおりてきて婿さんの背中にペタリとぶつかったのです。
「ウヒャーーーァ! まっ黒のバケモノが背中にかみついた!」
びっくりした婿さんが竹ざおを投げ捨てると、ふろしきからこぼれ出たぼたもちがつぶれて、中から白いおもちが出てきました。
それを見たむこさんは、よけいにビックリして、
「ドヒャーーーァ! バケモノが、歯をむいてきただ!」
と、言って、そのまま家まで逃げ帰ったという事です。
おしまい
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