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第 137話
大男の国
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朗読者 : ぬけさくのいちねん草紙 |
むかしむかし、二人の男が旅をしていて、一つ目の大男たちの住んでいる国へと迷い込みました。
この大男の国では、お城の様に大きな家が建っていて、畑には人間よりも大きな菜っ葉が植えられています。
「これは、とんでもない所へ来たものだ。はやく逃げないと、大男に捕まってしまうぞ」
二人がびくびくしながら歩いていると、にわかに空が曇って滝の様な大雨になりました。
二人は慌てて、大木の下に入りました。
「なんて雨だ! こんな大降りは初めてだ!」
大雨はどんどん激しくなり、雨の中では息も出来ないほどです。
すると近くを一つ目の大男たちが通りかかり、
「おや? 小雨が降ってきたのう」
「ああ、ちょっと物足りないが、いいおしめりじゃ」
と、言うのです。
「これが、小雨だと?」
二人は、青くなりました。
実はこの国の雨の雨粒は、米俵ほどの大きさが当たり前です。
それに比べれば、この滝の様な大雨も小雨程度なのです。
さて、旅人の一人がふと前を見ると、畑に大きなカボチャがありました。
そのカボチャの下の方に、虫の食った穴が開いています。
穴と言っても、人間が立って通れるほどの大きさですが。
「よし、あそこへ逃げこもう」
二人の男は、その穴に飛び込みました。
やがて雨があがると一つ目の大男がやって来て、二人が逃げ込んでいるカボチャをヒョイと持ち上げました。
「今日は、このカボチャを煮て食おう」
一つ目の大男はカボチャをまな板の上に乗せると、カボチャを手で二つに割りました。
ガバッ!
すると中から、二人の男が飛び出してきます。
「ありゃ、これはなんだ? 虫か?」
一つ目の大男が珍しそうに二人を見つめていると、別の大男が台所にやって来ました。
「どうした? 飯の支度はまだか?」
カボチャを割った一つ目の大男が、二人を指さして言いました。
「これを見ろ。珍しい物がいるぞ」
「へええ、これはまた小さな虫だな。いったい、どこで捕まえたんだ?」
「カボチャの中から出てきたんだ」
「カボチャ? するとカボチャを食う虫か? それなら、潰してしまおう」
それを聞いて、旅人の一人が大声でどなりました。
「わしらは、人間だ! この国に迷い込み、カボチャの中で雨宿りをしていただけだ!」
しかし一つ目の大男たちには旅人の大声が虫の小さな鳴き声程度にしか聞こえず、何を言っているのか分かりません。
そのうちに、一人の大男が言いました。
「この小さいのは、どうやら人間の様だ。可哀想だから、人間の国へ返してやろう」
そこでカボチャを割った一つ目の大男は二人をつまみ上げると、てくてくと歩いて二人を地面におろしてやりました。
「やれやれ、助かった」
こうして二人の旅人は、無事に自分たちの故郷へと帰ったそうです。
おしまい
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