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第 203話
ものぐさ桃太郎
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むかしむかし、おじいさんとおばあさんと、そして桃太郎が暮らしていました。
天気の良い日には、おじいさんが山へしば刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きますが、桃太郎は毎日遊んでばかりいます。
そこである日、おじいさんが言いました。
「桃太郎や、お前も大きくなったんだから、小さい子どもみたいに遊んでばかりおらんと、少しは人の助けになる事をしないといかんぞ」
「ああ、わかったよ。それじゃあ、出かけてくる」
桃太郎はそう言うと、そのままどこかへ出かけていきました。
夕方になり、おじいさんとおばあさんとが仕事から戻ってきても、桃太郎はまだ帰って来ません。
実は桃太郎、何か仕事をしようと珍しく山へ出かけて行ったのですが、今まで一度も木を切った事はないし、たきぎを拾う事も知りません。
それで一日中、木の根っこをまくらにして寝ていたのです。
目が覚めると、もう夕方でした。
「ああ、よく寝た。しかし、今日は何も仕事をしていないな。何かしないと、じいさまに怒られてしまう」
そこで桃太郎は、その木の根っこにジャージャーとおしっこをすると、根っこの土を柔らかくして、その木をズボッと根っこごと引き抜いたのです。
そしてその引き抜いた木をかつぐと、桃太郎は家へと帰っていきました。
「じいさま、ばあさま、今帰ったよ。おら、今日は仕事をしたんだぞ」
そう言いながら桃太郎は、かついできた木を家の屋根にたてかけました。
そして家に入ろうとした途端、たてかけた木の重みで、家がミシミシと音を立てて潰れてしまったのです。
可愛そうに、おじいさんもおばあさんも、潰れた家の下じきになって死んでしまいました。
「・・・しまった」
さすがの桃太郎は、しばらく呆然としていましたが、やがて気を取り直すと、
「まあ、済んでしまった事は仕方ねえ。それより今日は仕事をして疲れたから、もう寝るとするか」
と、そのまま潰れた家をまくらにして、高いびきをかきながら寝てしまったそうです。
なんなんでしょうね、このお話しは。
おしまい
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