6年生のイソップ童話
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ライオンとキツネとシカ
ライオンが病気になって、ほらあなの中でねていました。
このライオンは、一ぴきのキツネとなかよしでした。
お見舞(みま)いに来てくれたキツネに、ライオンはたのみました。
「ぼくの病気をなおしたいと思うのなら、森にいるシカをだましてここにつれてきてくれないか。ぼくはシカのはらわたと心臓(しんぞう)が、食べたくてたまらないんだ」
キツネは、シカをさがしにいきました。
まもなく、森の中ではね回っているシカが見つかりました。
キツネはシカに近づくと、
「こんにちわ。
あなたに、いい話があります。
われわれの王さまであるライオンくんが、いま病気で死にそうなんです。
それで、ライオンくんは自分が死んだ後の王さまをだれにするか考えました。
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イノシシは頭が悪いし、クマはのろまだ。
ヒョウはおこりっぽいし、トラはすぐにいばる。
そこで、シカくんなら背(せ)が高くてりっぱだし、長生きするし、どうどうとした角はあるしで、と、ここまでいえばわかるでしょう。
ライオンは次の王さまに、あなたをえらびました。
シカくん、王さまになりたいのなら、はやくライオンくんのところへいって下さい」
キツネの話を聞いて、シカはすっかりとくいになりました。
そして、キツネについていって、ライオンのほら穴(あな)に入りました。
たちまち、待ちかまえていたライオンがシカに飛びかかりましたが、
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しくじって、シカの耳を引きさいただけでした。
シカはいちもくさんに、森に逃(に)げかえりました。
「お願いだ。もういちど、なんとかして、あのシカをつれてきてくれよ」
「うーん、やっかいでむずかしいことを、たのむなあ。まあいい。なんとかやってあげるよ」
そしてキツネは、まるで猟犬(りょうけん)のようにシカの足あとをつけていきながら、どうやってだまそうかと頭をひねりました。
とちゅう、ヒツジ飼いたちにあったので、キツネは、
「血まみれになったシカを、見かけませんでしたか?」
と、たずねました。
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「あそこの林の中のねぐらにいるよ」
おしえられたキツネは、休んでいるシカのところへいって、すました顔であいさつしました。
シカはかんかんにおこって、毛を逆立てていいました。
「けがわらしいキツネめ。
もうだまされないぞ。
そばに来たら命はないと思え。おまえがどんな悪者か、知らないやつをだましにいくがいい。
王さまにしてやるといって、おだててやれ」
するとキツネは、
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「おやおや。
これはこまったな、そんなふうにわたしたちをうたぐるなんて。
ライオンくんがあんたの耳をつかまえたのは、王さまになったときの心がまえをおしえようとしたんだよ。
それなのにあんたは、病気のライオンくんがちょっとひっかいたのもがまんできないなんて。
あんたのふがいなさにおこったライオンは、こんどはオオカミを王さまにするといっているよ。
こまるなあ、らんぼうもののオオカミが王さまになっては。
だからさ、わたしといっしょにきてくれよ。
ライオンくんが、あんたに害を加えるはずがない。わたしが保証するから」
こんなふうに、キツネはシカをいいくるめて、もういちどライオンのところへ連れて行きました。
シカがほらあなにはいると、
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ライオンは、こんどはごちそうを逃(のが)さないぞ、とばかり、骨(ほね)からはらわたまでガツガツと食べてしまいました。
キツネは、そばでながめていました。
その足もとに、シカの心臓(しんぞう)がこぼれ落ちました。
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キツネはそれをさっと拾って、さんざんはたらかされた埋め合(うめあ)わせにと、ぺろりと食べてしまいました。
ライオンは、はらわたをはしから食べましたが、心臓(しんぞう)だけがみつかりません。
「心臓(しんぞう)は、どうしたのだろう?」
と、しきりにさがしています。
それを見てキツネは、ライオンの手のとどかないところまで逃(に)げてから、いいました。
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「このシカには、もともと心臓(しんぞう)がなかったから、さがしてもむだだよ。
だって、ふつうの心臓(しんぞう)を持っている動物なら、ライオンのすみかへ2度も、のこのこやってくるはずがないだろう」
この話は、えらくなりたいという気持ちがあんまりつよいと、ものごとを見きわめる事ができなくなり、危険(きけん)がさしせまっているのにも気がつかないと、いうことをおしえています。
おしまい
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