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4年生の江戸小話(えどこばなし)
文句(もんく)をいいに
高い薬代を取られているのに、ちっとも病気が良くならない旦那が小僧に言いつけました。
「まったくあのやぶ医者め! 今まで倉が建つほどの薬代を払っているのに、ちっとも良くならないではないか! 小僧よ、くやしいからこれから医者の家に行って、うんと文句を言って来てくれ」
「はい。承知しました」
小僧はすぐに家を出て行きましたが、少しもしないうちに戻ってきました。
「おや? ずいぶん早く帰って来たではないか。でもまあ、文句だけは思いっきり言って来てくれたのだろうな?」
旦那が尋ねると、小僧は数字が書いた紙切れを旦那に見せました。
旦那が見てみると、紙切れには八十七番と書いてあります。
「何だ? この紙切れは?」
「はい。旦那さまの言いつけ通り、医者の家に文句を言いに行ったのですが、そこにはわたくしの様に文句を言いに来た人たちが大勢詰めかけていまして、家の中には一歩も入れませんでした。
そこで、とりあえず整理券(せいりけん→番号の書いた、順番待ちの予約券)をもらい、引き返してまいりました」
おしまい
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