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6年生の江戸小話(えどこばなし)
なむあみだぶつ
♪おはなしをよんでもらう(html5) |
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朗読 : エクゼムプラーロ |
両国(りょうごく)で、クマの見せ物をしているおじいさんがいました。
見せ物には、なによりお天気が第一です。
このところ、ずっとお天気続きなので、毎日が大入り満員(おおいりまんいん→お客でいっぱいの様子)です。
おじいさんはすっかり喜んで、自分も出入り口に現れると、
「さあ、クマだ、クマだ。
日本一の、大グマだ。
江戸では、初めてのおめみえ。
そーれ、よってらっしゃい、見てらっしゃい」
と、大声を張り上げて、お客を呼び込んでいました。
ところがこのおじいさん、突然の病気になって、あとは息をひきとるばかりです。
それなのに、店に出ると大声をあげて、
「クマだ、クマだ。日本一の大グマだー!」
と、怒鳴ってばかりです。
もうすぐ死ぬというのに、念仏(ねんぶつ)をとなえるどころではありません。
「ああ、こんな事では、後生(ごしょう→死んでから生まれ変わること)が悪かろう」
心配したおばあさんは、おじいさんに言いました。
「さあ、お前さん。もうすぐ、お迎えが来るんだよ、なむあみだぶつの一つぐらいは、唱えないと」
しかしおじいさんは、念仏を唱えるどころか、
「クマだ、クマだ。日本一の大グマだー!」
と、わめくばかり。
集まった身内の者たちも、口々にに念仏を進めましたが、おじいさんは、
「クマだ、クマだ。日本一の大グマだー!」
の一点ばりです。
これを見た医者が、おばあさんや身内に言いました。
「どれ、このわたしが、おじいさんに念仏を言わせてみせましょう」
そして医者は、おじいさんの耳に口をよせて言いました。
「じいさん、明日は大雨だぞ」
するとおじいさんは、急に大人しくなって、
「ああ、なむあみだぶつ、なむあみだぶつ」
と、唱えたそうです。
おしまい
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