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11月1日の小話

カモの夢
   カモの肉というものは、せり(セリ科の多年草。水田で野菜として栽培)といっしょに煮ると、たいヘんおいしい味がいたします。
   ある晩。
   水田(すいでん)に、たくさんのカモがおりて、羽の間ヘ首をつっこんで、ねておりました。
   カモには、おき番というものがあって、一羽だけがねずに、みんなを守って番をしているのがおります。
   クワーーーッ クワッ
   一羽のかもが、しきりにうなっておりますので、おき番はそばヘいって、
  「これ、どうした?」
  と、きくと、
  「ああ、おそろしい夢をみた」
  「そうか。どんな夢だ」
  「なベの中で、ぐつぐつ煮られる夢をみた」
  「そいつは、おそろしい夢だ。しかし、そんなところでねている、おまえがわるい」
  「へっ?」
 見れば、そのカモは、せりをしいて、ねておったそうでございます。
おしまい