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6年生の日本民話
金色のトビ
宮崎県(みやざきけん)の民話
むかしむかし、日向の国(ひゅうがのくに→宮崎県(みやざきけん))に、伊波礼毘古命(いわれびこのみこと)という人がいました。
伊波礼毘古命(いわれびこのみこと)は、高千穂(たかちほ)というところで国をおさめていましたが、そこはあまりにもはしっこの国だったので、もっと東の方へ移ろうと思い、軍隊をひきいてそこを出発しました。
そして海を渡(わた)ったり、陸を進んだり、長い月日をあちらこちらと歩きまわりました。
ある年の夏、伊波礼毘古命(いわれびこのみこと)の軍隊が、今の大阪湾(おおさかわん)から陸へあがろうとしたときのことです。
大和の国(やまとのくに→奈良県(ならけん))の、いなかのほうにいた長髄彦(ながすれひこ)という人が、
「伊波礼毘古命(いわれびこのみこと)の軍隊がここへ来たのは、きっと、わたしたちの国をうばい取るつもりなのだろう」
と、思い、たくさんの兵隊を集めて、待ちかまえていました。
それで伊波礼毘古命(いわれびこのみこと)の軍隊が乗った船が浜辺(はまべ)につくなり、さかんに矢をいてきました。
伊波礼毘古命(いわれびこのみこと)の軍隊はたてを手に持ち、ビュー、ビューと飛んでくる矢を防ぎながら、陸にあがって戦いました。
この戦いで、伊波礼毘古命(いわれびこのみこと)の兄さんが、長髄彦(ながすれひこ)の矢に当たって深いきずを受けました。
兄さんは、そのきずをおさえながら言いました。
「わたしたちは太陽の子でいながら、太陽のほうに向かって戦ったのがまちがいだった。これから遠まわりをして、太陽を後ろにして戦おう」
そこで伊波礼毘古命(いわれびこのみこと)の軍隊は、もう一度船に乗って南の方へまわることにしました。
その途中(とちゅう)、兄さんは矢のきずがもとで、なくなってしまいました。
「ようし、兄さんのかたきは、きっと取ってみせるぞ」
伊波礼毘古命(いわれびこのみこと)はそう決心をし、長髄彦(ながすれひこ)をにくみました。
伊波礼毘古命(いわれびこのみこと)の軍隊が陸にあがると、べつの新しい敵がいました。
この敵をうつために、けわしい山道を道案内をしてくれたのは、『八咫(やた)ガラス』という、カラスでした。
こうして伊波礼毘古命(いわれびこのみこと)の軍隊は、ようやく長髄彦(ながすれひこ)のいるあたりへ来ました。
長髄彦(ながすれひこ)も、伊波礼毘古命(いわれびこのみこと)の軍隊が攻(せ)めよせてくることを早くから知っていたのでしょう。
敵ながら、力いっぱい戦いました。
そのうちに、長髄彦(ながすれひこ)のほうの兵隊の勢いが強くなり、伊波礼毘古命(いわれびこのみこと)の軍隊は負けそうになってきました。
「あぶない、味方がやられる!』
伊波礼毘古命(いわれびこのみこと)がそう思ったとき、にわかに空が暗くなって、大雨が降(ふ)ってきました。
そして大雨の中を、どこからか金色のトビが飛んできて、軍隊を指揮(しき)している伊波礼毘古命(いわれびこのみこと)が持った弓のてっぺんにとまったのです。
「うわっ、まぶしい!」
長髄彦(ながすれひこ)の兵隊は、うろたえてさけびました。
その金色のトビの光りかがやくようすが、まるでいなびかりのように見えたのです。
「これは、たまらん!」
敵のだれもがまぶしさに目がくらんでしまい、もう戦うどころではありません。
おかげで味方の軍隊は勢いをもりかえし、伊波礼毘古命(いわれびこのみこと)は長髄彦(ながすれひこ)をうちほろぼすことができました。
この伊波礼毘古命(いわれびこのみこと)という人が、神武天皇(じんむてんのう)なのです。
おしまい
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