
  福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話 > うごく城
3月15日の日本民話
  
  
  
  うごく城
  山口県の民話 → 山口県情報
 むかしむかし、ある大名に、美しい姫がおりました。
   姫も年頃になり、毎晩たずねてくるりっぱな若侍(わかざむらい)に恋するようになりましたが、若侍の家も名前もわかりませんでした。
   ある日、姫がその事をうばに打ち明けると、
  「その方の着物のすそに、長い糸を結んだ針をつけてごらんなさい」
  と、教えてくれました。
   姫はうばの言うとおりにして、その糸をたどっていくと、中の島の池の中まで続いていました。
   姫は若侍が妖怪(ようかい)だと思って悲しみましたが、その夜、大名(だいみょう)の夢枕(ゆめまくら)にその若侍が現れて、
  「わたしは池の主の大ガメです。姫に心をひかれて、毎夜かよっておりましたが、正体を見破られてはどうすることもできません。おわびのしるしに、中の島に城をおきづきください。きっと、難攻不落(なんこうふらく)の城となりましょう」
   大名が言われたとおりに城をつくると、敵が攻めてきても島ごと動いてしまうので、敵はどうすることもできませんでした。
   それもそのはずで、その城をささえていたのは、あの大ガメだったからです。
   しかしある年、城の中に井戸を作ることになりました。
 水が出てくるあたりまで掘り下げると、井戸からは水のかわりにおびただしい血が七日七晩ふきだし、とうとう城は動かなくなってしまったという事です。
おしまい