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4月6日の日本民話
赤児の授かり小判
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むかしむかし、ある山の地蔵堂(じぞうどう)の中で、旅のお坊さんが目をさました。
お坊さんは身仕度(みじたく)をしてお堂(どう)の外へ出ると、何かで足をつまずきました。
「うん? なんじゃ?」
お坊さんが手にとって見ると、それは小判が一枚入った財布(さいふ)で、財布の中には一枚の紙が入っており、その紙には《初息子(はつむすこ)に与える金》と書いてありました。
「なるほど、残念じゃが、これはわしがもらうものではない。ここにおいておこう」
と、お坊さんは財布をもと通りお堂の前におき、近くで用を足していると、一人のおじいさんが来て、お堂の前の枯葉(かれは)を集め、財布に気づかずに枯葉と一緒に背負ったカゴに入れて山を下りて行きました。
お坊さんはその日はふもとの村々を歩き、夕方になると一軒の家に宿をたのみました。
こころよく宿を引き受けたその家の主は、なんと、今朝の木の葉集めのおじいさんだったのです。
そしておじいさんの息子の嫁さんが、今日、男の子を産んだので、おじいさんもおばあさんもニコニコしていました。
お坊さんは、
(さては、このじいさまが地蔵堂の前をきれいにしてくれる礼に、神さまが小判をさずけたのだな)
と、思い、おじいさんに財布の事を話しました。
おじいさんが庭に出てひろい集めた落葉の中をさがすと、やはりあの財布が出て来ました。
でも、おじいさんは、
「ありがたい話しじゃが、これはお坊さまが先に見つけた物で、おれのものではねえ。この財布はお坊さまの物だ」
と、さし出します。
ですが、お坊さんは書いてある通り、
「いいや、これは今日生まれた男の子のものだ。わしがもらうものではない」
と、おじいさんにおさめさせました。
次の朝、旅立つお坊さんにおばあさんが、
「どうぞ、昼に食べてください」
と、にぎりめしを持たせてくれたのです。
じつはそのにぎりめしには、きのうの小判が入れてありました。
お坊さんが峠(とうげ)を下りて行く途中、荷物を背負い、腹をすかせたような若者とあったので、お坊さんはおばあさんからもらったにぎりめしをあげました。
若者はお坊さんに何度もお礼をいい、峠をのぼって行きました。
この若者ですが、実はお坊さんがきのう世話になった家の息子、すなわち、きのう産まれた赤ちゃんの父親だったのです。
小判はやはり、初息子へとさずかったのです。
おしまい