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5月24日の日本民話
  
  
  
  テングのねごと
  三重県の民話 → 三重県情報
  むかしむかし、太夫(たゆう)という村に、大きな大きな杉の木がありました。
   その杉の木にはテングが住んでいて、毎晩、村から娘を一人、二人とつれて行くので、この村にはとうとう娘がいなくなってしまいました。
   村の人々はなんとかして、テングをこらしめる方法はないものかと考えました。
   ある日の事、一人の村人が
  「テングは鼻が高くて赤ら顔だから、テングよりももっと顔の赤い獅子頭(ししがしら)をつくって、テングをおどかしてやってはどうだ?」
  と、いいました。
   そこでさっそく村人たちは獅子頭を作り、村の十字路におきました。
   夜になり、テングは娘を探しに村の十字路にやって来ました。
   村人たちは獅子頭をかぶると、
  「それっ!」
  と、テングにとびかかりました。
  「なんと! この村に、わしよりも顔が赤くて強い者がいるとは」
  と、テングは杉の木の中へ姿を消してしまいました。
   そしてテングは杉の木のてっぺんから、村にむかって大きな声で、
  「今まで食べた娘を全部はきだすから、許してくれ!」
  と、さけび、テングは一人ずつ口から娘をはきだしたのです。
   それからというものは、村の杉の大木から、
  「許してくれ、許してくれ」
と、いうような、テングのねごとが聞こえてくるようになったという事です。
おしまい