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2年生の日本民話(にほんみんわ)
テングの面(めん)と娘(むすめ)さん
和歌山県(わかやまけん)の民話(みんわ)
むかしむかし、ある村に、お母(かあ)さんと娘(むすめ)さんが住(す)んでいました。
娘(むすめ)さんは、一人前(いちにんまえ)になったので、町のお金持(かねも)ちの家(いえ)で、働(はたら)くことになりました。
「お母(かあ)さん、どうかたっしゃでいてください」
親孝行(おやこうこう)な娘(むすめ)さんは、お母(かあ)さんの似顔絵(にがおえ)とカガミを持(も)って出かけました。
娘(むすめ)さんは、お母(かあ)さんが恋(こい)しくなると、カガミのよこにおいてある、お母(かあ)さんの似顔絵(にがおえ)を見て話(はな)しかけます。
「お母(かあ)さん、今日(きょう)もいっしょうけんめい働(はたら)きました。お金がたまったら、きっと帰(かえ)りますからね」
お屋敷(やしき)にいる男たちは、この働き者(はたらきもの)でかわいい娘(むすめ)さんが、気に入りました。
でも、いくら話(はな)しかけても、お母(かあ)さんの事(こと)ばかりで、自分(じぶん)たちの事(こと)を、好(す)きになってくれません。
「よし、それなら、おっかさんの事(こと)をわすれさせてやろう」
ある日、男の一人がお母(かあ)さんの似顔絵(にがおえ)を取(と)りあげて、そのかわりに、テングの面(めん)をおいておきました。
そんな事(こと)とは知(し)らない娘(むすめ)さんは、テングの面(めん)を見てビックリ。
「にっ、似顔絵(にがおえ)が、テングの面(めん)にかわるなんて。もしかして、お母(かあ)さんが病気(びょうき)になったのかもしれない!」
そう思(おも)うと、もう、ジッとしていられません。
娘(むすめ)さんは、お屋敷(やしき)のだんなさんにたのんで休みをもらうと、テングの面(めん)を持(も)って、お母(かあ)さんのところへ帰(かえ)っていきました。
ところが帰(かえ)る途中(とちゅう)、山の中で山賊(さんぞく)たちにつかまってしまいました。
「わしらは今夜(こんや)、町に仕事(しごと)へ出かける。もどってくるまでに、火をおこしておけ。もし逃(に)げたりしたら、ひっつかまえて、殺(ころ)してやるからな」
山賊 さんぞく)の親分(おやぶん)が、言(い)いました。
娘(むすめ)さんはしかたなく、山賊(さんぞく)のいうとおりにしました。
山賊(さんぞく)の出かけた後(あと)、木をひろい集(あつ)めて火をおこすことにしました。
でも、山の木はしめっていて、なかなか燃(も)えません。
けむりばかりで、けむくてたまらないので、娘(むすめ)さんは、テングの面(めん)をかぶって火をつけました。
やっと火がついたので、今度(こんど)は山賊(さんぞく)たちのおいていった、たいまつに火をうつしました。
「ああ、早く帰(かえ)りたい。お母(かあ)さん、どうしているかな?」
たいまつにあたりながら、娘(むすめ)さんがお母(かあ)さんのことを思(おも)っていると、ま夜中(よなか)になって、小判(こばん)や宝物(たからもの)をかついだ、山賊(さんぞく)たちがもどってきました。
すると、どうでしょう。
おそろしいテングが、たいまつのまわりを、うろうろしているのです。
明(あ)かりにてらされたテングの顔(かお)が、山賊(さんぞく)たちをにらみつけました。
「お、おっ、親分(おやぶん)、て、てっ、テングが・・・」
子分(こぶん)に言(い)われて、親分(おやぶん)も青くなりました。
いくら山賊(さんぞく)でも、テングは怖(こわ)いのです。
「にげろ!」
山賊(さんぞく)たちは、まるで転(ころ)がるようにして、山をおりていきました。
その騒(さわ)ぎにビックリした娘(むすめ)さんが、面(めん)を取(と)ってみると、そこには山賊(さんぞく)たちがおいていった、小判(こばん)や宝物(たからもの)が、山のようにつまれています。
「まあ、うれしい」
娘(むすめ)さんは、その小判(こばん)や宝物(たからもの)をひろって、家(いえ)に帰(かえ)っていきました。
そして、その小判(こばん)や宝物(たからもの)のおかげで、娘(むすめ)さんとお母(かあ)さんは、いつまでも幸(しあわ)せにくらしたという事(こと)です。
おしまい
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