|
|
4年生の世界昔話
クルミ割(わ)り人形とネズミの王さま
ホフマンの童話
♪音声配信(html5) |
|
音声 得本綾(コトリボイス) ラジオHP |
むかしむかしの、クリスマスの前の晩(ばん)です。
女の子のマリーは、お父さんとお母さんから、とってもすてきなプレゼントをもらいました。
おいしそうなお菓子(かし)、おもちゃのウマ、ネジで動く兵隊(へいたい)さん、それから、とてもすばらしいお城(しろ)。
その中で、マリーがいちばん気にいったのは、変(へん)なかっこうをしたクルミ割(わ)り人形でした。
「あたし、あなたが大好(だいす)きよ」
マリーが、クルミ割(わ)り人形を抱(だ)いて、そういったときです。
突然(とつぜん)そこへ、何十匹(10ぴき)ものネズミの大軍(たいぐん)が押し寄(おしよ)せてきたのです。
すると、どうでしょう。
今まで、ジッとしていた人形たちが動きだして、ネズミの大軍(たいぐん)と戦争(せんそう)を始めたではありませんか。
もちろん、マリーに抱(だ)かれていたクルミ割(わ)り人形も立ちあがって、いさましく戦(たたか)いました。
ところが、ネズミはおおぜいです。
人形たちは、負けそうになりました。
そこで思わずマリーは、自分のクツをネズミの大軍(たいぐん)に投げつけたのです。
ネズミたちはビックリして、逃(に)げていきました。
つぎの晩(ばん)、また、ネズミの大軍(たいぐん)が、マリーのへやにやってきました。
「おい、ちびすけ。おれたちにお菓子(かし)をよこせ。よこさないと、クルミ割(わ)り人形を殺(ころ)してしまうぞ」
ネズミたちは、こういってマリーをおどかしました。
マリーは、クルミ割(わ)り人形をしっかり抱いで首をふりました。
ところが、つぎの晩(ばん)も、そのつぎの晩(ばん)も、ネズミたちはやってくるのです。
「ぼくに、刀をかしてください。そうしたら、ネズミたちをやっつけてやります」
ある晩(ばん)、クルミ割(わ)り人形がいいました。
そこでマリーが、おもちゃの刀を持たせてやると、クルミ割(わ)り人形はネズミの王さまと戦(たたか)って、とうとう王さまを倒(たお)してしまいました。
「刀を貸(か)してくれてありがとう。お礼に、あなたを人形の国に連(つ)れていってあげましょう」
クルミ割(わ)り人形は、マリーを楽しい人形の国へ連(つ)れて行ってくれたのです。
朝になって、マリーは家の人にその話をしました。
「マリー、それは、あなたが夢(ゆめ)を見ていたのよ」
お母さんが、いいました。
「そんな、ばかなことがあるはずないじゃないか」
お父さんも、いいました。
(そうね。夢(ゆめ)だったのかも)
ところが、それから何年かたった、ある日のことです。
マリーの家に、りっぱな若者(わかもの)がたずねてきました。
玄関(げんかん)に出たマリーを見ると、若者(わかもの)は、やさしい目でほほえみます。
はじめて見る顔ですが、マリーは若者(わかもの)と、どこかであったような気がしました。
「・・・あなたは、だあれ?」
「わたしは、あなたのおかげで人間にもどることができた、クルミ割(わ)り人形です。子どものころネズミののろいをうけて、人形にされてしまいました。でも、あなたがかしてくれた刀でネズミの王さまをたおし、やっと人間になれたのです」
それを聞いて、マリーは、すっかりうれしくなりました。
「どうか、わたしのお嫁(よめ)さんになってください」
「はい」
マリーは若者(わかもの)のお嫁(よめ)さんになって、銀のウマが引く金の車に乗って、若者(わかもの)といっしょに出かけていきました。
これはマリーの夢(ゆめ)なのか、それとも本当のことなのか、マリーにもわかりません。
本当なら、すてきですね。
おしまい
|
|
|