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4年生の世界昔話
空飛(と)ぶじゅうたん
千夜一夜物語 → 千夜一夜物語(せんやいちやものがたり→アラビアンナイトのせつめい)
むかしむかし、インドのある王さまには、三人の王子がおりました。
王子たちの名まえは、「フーセイン」、「アリ」、「アーメッド」です。
また王さまは、なくなった兄の娘(むすめ)の「ヌーロニハル」もかわいがって、いっしょにお城(しろ)にすまわせていました。
さてある時、とてもこまったことがおこりました。
「ヌーロニハルと、結婚(けっこん)したいのです」
と、王子たちが三人ともいい出したのです。
でも、三人と結婚(けっこん)するわけにはいきません。
王さまは、考えたすえにいいました。
「では、この世で一ばんめずらしいものを見つけてきた者に、姫(ひめ)との結婚(けっこん)をゆるすとしよう」
そこで王子たちは、めずらしいものを探(さが)すために、べつべつに旅に出て、帰りに宿屋でおちあいました。
「ほら、ぼくのめずらしいものは、これだぞ」
三人はとくいになって、手に入れたものを見せあいました。
フーセインは、自由に空をとべるじゅうたん、アリは、どんな遠いところでも見えるぼうえんきょう、アーメッドは、においをかぐと病気がなおるリンゴでした。
そして三人で、ぼうえんきょうをのぞくと、ヌーロニハルが病気で苦しんでいるのが見えたのです。
「大変(たいへん)だ! すぐに帰らないと」
三人は、空とぶじゅうたんにとびのって、お城(しろ)ヘかけつけました。
そして、魔法(まほう)のリンゴのおかげで、ヌーロニハルはたちまち元気をとりもどしました。
王さまは大よろこびのあと、大よわりです。
三人の持ってきた三つの品は、どれもめずらしいもので、どれもヌーロニハルを助けるのに役だったからです。
考えなおした王さまは、いいました。
「矢を一ばん遠くまで飛(と)ばしたものを、ひめのむこにきめるとしよう」
そこで王子たちは、ならんで矢をはなちました。
アーメッドの矢が一番飛(と)んだのですが、飛(と)びすぎてどこかへいって見つからないので、王さまは二ばんめに遠くまでとばした、アリをむこにきめました。
「見つからないからだめだなんて、こんなくやしいことがあるもんか!」
アーメッドはがまんできずに、矢をさがしてどんどん歩いていきました。
矢は、山のふもとの岩の上におちていました。
「おやっ? 岩にとびらがあるぞ」
アーメッドがとびらをあけると、そこには美しい姫(ひめ)がたっていました。
「ようこそ、アーメッドさま。わたしはぺリパヌー姫(ひめ)ともうします」
アーメッドは、ひと目でぺリパヌー姫(ひめ)に心をひかれました。
やがて二人は結婚(けっこん)し、幸せな月日がすぎました。
「一度、父上にあいにいってこよう」
ひさしぶりにお城(しろ)へかえったアーメッドを見て、王さまはたいそうよろこびました。
「元気か? おまえがいなくなったあと、フーセインも空とぶじゅうたんで旅に出てしまい、さみしいかぎりだ。今はどこでくらしているのだ?」
「それはいえません。そのかわり、わたしは月に一度、お城(しろ)へ帰ってまいります」
これを聞きつけて、大臣(だいじん)がいいました。
「王さま、アーメッドさまはヌーロニハル姫(ひめ)と結婚(けっこん)できなかったのをうらんで、今にせめてくるかもしれません」
「そんな、ばかな」
王さまは、気にもとめませんでした。
でもある日、そっと魔法使(まほうつか)いにアーメッドをさがさせますと、魔法使(まほうつか)いが言いました。
「王さまたいへんです! 王子さまはわたしよりずっと魔法(まほう)の力がある姫(ひめ)と結婚(けっこん)して、宝石(ほうせき)のかがやくお城(しろ)にすんでいます」
王さまは、あわてました。
「そんなにすごい魔法(まほう)を使えるなら、この国をのっとることなど、かんたんであろう。しかし、アーメッドがそんなことをするはずが・・・」
そこへ、大臣(だいじん)と魔法使(まほうつか)いがいいました。
「いいえ、王さま。アーメッドさまは必(かなら)ずせめてきます。かわいそうですが、アーメッドさまに何かを失敗(しっぱい)させて、それを理由に処刑(しょけい→死刑(しけい))しましょう」
つぎの月になり、アーメッドがきた時、王さまは大臣(だいじん)と魔法使(まほうつか)いに教えられた、とんでもない注文を出しました。
「わしの軍隊(ぐんたい)がぜんぶすっぽり入ってしまい、たためば手のひらにのるような、そんなテントをもってきてくれないか」
アーメッドはおどろいて、自分の城(しろ)ヘ帰り、それをぺリパヌー姫(ひめ)にはなしました。
「お気のどくに。王さまはきっと、だれかにおどかされていらっしゃるのですね。・・・はい、これがそのテントです」
さすがは、力がある魔法使(まほうつか)い。
姫(ひめ)はかんたんに、注文のテントをアーメッドにわたしたのです。
アーメッドはそれをもって、王さまのところヘいきました。
本当にテントの中に軍隊(ぐんたい)が入るのを見て、王さまのおどろいたことといったらありません。
王さまはまた、大臣(だいじん)と魔法使(まほうつか)いに教えられた、むちゃなことをいいました。
「ライオンの泉(いずみ)の水をくんできておくれ。あれを飲むと、長生きできるそうだから」
アーメッドは、ため息をつきました。
その泉(いずみ)にはおそろしいライオンがいて、近づく人間を食い殺(ころ)すのです。
でも、話を聞いたぺリパヌー姫(ひめ)は、アーメッドにいいました。
「だいじょうぶですよ、アーメッド。ライオンにヒツジの肉をなげればいいのです」
アーメッドは、ライオンがヒツジの肉を食ベているあいだに、水をくむことができました。
「アーメッドは、まったくふしぎな力をもっている。・・・だが、まさか、これはだめだろう」
王さまは大臣(だいじん)と魔法使(まほうつか)いに教えられた、三回めの注文を出しました。
「身長が一メートル、ひげの長さが十メートルあって、とても力持ちのじいさんをつれてきてくれ」
「今度ばかりは、もうだめだ」
まえよりふかいため息をついたアーメッドに、ぺリパヌー姫(ひめ)はいいました。
「ご心配なく、アーメッド」
そういったかと思うと、王さまののぞみどおりの人があらわれました。
おどろいたことに、それは姫(ひめ)のお兄さんのシャイパルだったのです。
アーメッド王子とシャイパルは、王さまのところへ急ぎました。
そして、
「大臣(だいじん)に魔法使(まほうつか)い! 王さまをそそのかしてアーメッドを殺(ころ)そうとした罪(つみ)は重いぞ!」
シャイパルは鉄の棒(ぼう)をビュンビュンふりまわして、その風で大臣(だいじん)と魔法使(まほうつか)いをまどの外にふきとばしました。
王さまは、ハッと顔をあげていいました。
「悪かったアーメッド。ゆるしておくれ」
王さまが心からあやまると、アリもヌーロニハル姫(ひめ)もかけよってきて、心からアーメッドをむかえました。
「それにしても、フーセインもはやくもどってくればいいのに。今ごろ空とぶじゅうたんで、どこをとんでいるんだろう?」
みんなはそういって、空を見あげました。
おしまい
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