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6月3日の世界の昔話
ワラと炭とマメ
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むかしむかし、ある村に、ひとりのまずしいおばあさんが住んでいました。
おばあさんはマメをひとさらあつめて、にようと思いました。
そこで、おばあさんはかまどに火をおこすため、ひとつかみのワラに火をつけました。
おばあさんがマメをナベにあけるとき、知らないまに、ひとつぶだけおばあさんの手からすべりおちました。
そのマメは床の上のワラのそばに、コロコロところがっていきました。
すると、すぐそのあとから、まっ赤におこっている炭がかまどからはねだして、この二人のところへやってきました。
すると、ワラがいいました。
「おまえさんたち、どこからきたんだね?」
炭がこたえました。
「おれはうまいぐあいに、火のなかからとびだしてきたんだよ。こうでもしなかったら、まちがいなしにおだぶっさ。もえて灰になっちまうにきまってるもの」
こんどは、マメがいいました。
「あたしもぶじににげてきたわ。あのおばあさんにおナベの中へいれられようものなら、ほかのお友だちとおんなじように、なさけようしゃもなく、ドロドロににられてしまうところだったのよ」
「おれだって、にたりよったりのめにあってるのさ」
と、ワラがいいました。
「おれの兄弟たちは、みんなあのばあさんのおかげで、火をつけられて煙(けむり)になっちまったんだ。ばあさんたら、いっべんに六十もつかんで、みんなの命をとっちまったのさ。おれだけは、運よくばあさんの指のあいだからすべりおちたからいいけどね」
「ところで、おれたちはこれからどうしたらいいだろう?」
と、炭がいいました。
「あたし、こう思うのよ」
と、マメがこたえました。
「あたしたちは運よく死なずにすんだんですから、みんなでなかよしのお友だちになりましょうよ。そして、ここでもう二度とあんなひどいめにあわないように、いっしょにそとへでて、どこかよその国へでもいきましょう」
この申し出は、ほかのふたりも気にいりました。
そこで三人は、つれだってでかけました。
やがて三人は、とある小さな水の流れのところにやってきました。
見ると、橋もなければ、わたし板(いた)もありません。
三人は、どうしてわたったものか、とほうにくれてしまいました。
すると、ワラがうまいことを思いついていいました。
「おれが横になって、ねころんでやろう。そうすれば、おまえさんたちは橋をわたるように、おれのからだの上をわたっていけるというもんだ」
こういって、ワラはこっちの岸からむこうの岸まで、からだを長ながとのばしました。
すると、炭は生まれつきせっかちだったものですから、このできたばかりの橋の上をかけだしました。
ところが、まんなかまできて、足の下で水がザーザーとながれる音をききますと、どうにもこわくなって、そこに立ちすくんでしまいました。
そのうちにワラはもえだして、ふたつに切れて、流れのなかへおっこちました。
炭もあとから足をすべらせて、水のなかへおちました。
そして、ジュウッといって、命をうしなってしまいました。
マメは用心(ようじん)ぶかく、まだこっちの岸にのこっていましたが、このできごとを見ますと、おかしくってわらわずにはいられません。
ところが、マメはあんまりひどくわらったものですから、とうとうパチンとはじけてしまいました。
そのとき、旅まわりをしている仕立屋(したてや)さんが、運よく、はじけたマメをみつけてくれました。
仕立屋さんは、なさけぶかい人でしたから、さっそく針と糸とをとりだして、マメの体をぬいあわせてくれました。
マメは仕立屋さんに、何度も何度もお礼をいいました。
けれども、仕立屋さんがつかったのは黒い糸でしたので、それからというものは、どのマメにも黒いぬい目がついているのです。
おしまい