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7月6日の世界の昔話

五粒のエンドウ豆

五粒のエンドウ豆
アンデルセン童話 → 詳細

 エンドウ豆のさやの中に、五粒の豆が並んでいました。
 さやも緑色、五粒の豆も緑色、それで五粒のエンドウ豆は、
「きっと世界中が、みんな緑色をしているんだ」
と、思っていました。
 やがて、エンドウ豆のさやは黄色になりました。
 五粒の豆も、そろって黄色になりました。
 そこで、みんなはいいました。
「世界中が、黄色くなった」
 それからみんなで、こんなお話を始めました。
「もうすぐ、さやがはじけるよ。そうしたら、ぼくたちは外へ飛び出すんだ」
「外に出たら、どうするの?」
「だれかが、きっと待っているんだ」
 すると、そのときです。
 突然、みんなの入っているさやを引っぱった者がありました。
 小さな男の子の手のひらです。
「あ、さやがはじける」
 五粒のエンドウ豆がさけびました。
 パチン! コロコロコロ。
 五粒のエンドウ豆は、そろって外にころがり出ました。
「うわっ、まぶしい!」
 五粒のエンドウ豆は、はじめて見た空と、お日さまの光にビックリです。
 ところが、ビックリしたのはそれだけではありません。
 男の子はポケットから豆鉄砲を取り出すと、一番めのエンドウ豆を豆鉄砲につめこみました。
 そして、
 ズドン!
 一番めのエンドウ豆はさけびました。
「ぼくはいくよ。もっと広い世界に」
 二番めのエンドウ豆も、豆鉄砲につめこまれました。
 ズドン!
「ぼくはいくよ。お日さまのところへ」
 三番めと四番めのエンドウ豆は、コロコロと逃げ出しました。
「ぼくたちは、ころがっていくんだ。まだ眠いから」
 でも、ズドン! ズドン!
 やっぱり、豆鉄砲に入れられて撃たれてしまいました。
 いよいよ、いちばんおしまいの五番めのエンドウ豆の番です。
「さようなら」
 五番めのエンドウ豆は空を飛んでいきました。
 そして、小さな屋根裏ベやのまどの下の、ほんの少し、やわらかな土のたまっている所に落ちたのです。
 さて、その小さな屋根裏ベやには、貧しいお母さんと病気の女の子が住んでいました。
 女の子はお母さんが仕事にいってしまうと、一日じゅう、ひとりでベッドに寝ているのです。
 ある日のことです。
 お母さんが仕事から帰ってくると、女の子がいいました。
「見て、まどの所に緑色の物が見えるのよ。あれは、なあに?」
 お母さんはまどをあけてみました。
 えんどうの葉っぱです。
 土の上に落ちたエンドウ豆が、芽を出していたのです。
 女の子も、お母さんも喜びました。
 さびしがっていた女の子は、どんどんのびるエンドウ豆を見ていると、自分も元気になるような気がしました。
 そして本当に、一日一日と病気がよくなってきたのです。
「あたし、もう病気がなおったわ。どうもありがとう。エンドウ豆の小さいお花さん」
 五番めのエンドウ豆の花は、すっかり元気になった女の子を見て、うれしそうに風にゆれていました。
 でも、ほかのエンドウ豆はどうなったでしょう?
 一番めのエンドウ豆も、二番めのエンドウ豆も、三番めのエンドウ豆も、ハトに見つかって食べられてしまいました。
 でも、ハトが喜んで食ベたので、エンドウ豆も喜んでいました。
 ところが、四番めのエンドウ豆はドブに落ちて、こういっています。
「ぼくは、えらいんだ。ドブの水をたくさん飲んで、こんなに大きくふくれてるんだから」

おしまい

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