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4年生の世界昔話
リジーナとネコの家
イギリスの昔話 → イギリスのせつめい
むかしむかし、リジーナというやさしい女の子がいました。
リジーナは町はずれの小さな家で、欲(よく)ばりのお母さんと、意地悪なおねえさんのペピーナといっしょにくらしていました。
ある日、お母さんがリジーナに言いました。
「家のお金が少なくなってきたから、おまえは働(はたら)いておいで。私(わたし)とペピーナは、家を守って留守番(るすばん)しているからね」
リジーナは、
「はい」
と、答えて家を出ました。
お母さんは、自分に似(に)ているペピーナばかりかわいがります。
そしていつだって、リジーナが働(はたら)いて持ってくるお金をあてにしていました。
でも、やさしいリジーナは、文句(もんく)1つ言わずに、
「お母さんとねえさんが喜(よろこ)ぶのなら、一生懸命(いっしょうけんめい)働(はたら)くわ」
と、出かけて行くのでした。
町のとおりに出ると、リジーナは、プンプン怒(おこ)ってお屋敷(やしき)から出て来る女の人に会いました。
「いったい、どうしたのですか?」
リジーナがたずねると、女の人はお屋敷(やしき)を指さしながら、顔をまっ赤にしていいました。
「まったく、この屋敷(やしき)にはネコしかいないと聞いたから、仕事は楽だろうと思ったけれど、とんでもないのよ。いくら掃除(そうじ)しても毛は落ちているし、カーテンは引きちぎるし、柱で爪(つめ)はとぐし、私(わたし)が怒(おこ)れば飛(と)びついて来るし。もう、ネコの世話と屋敷(やしき)の仕事はコリゴリよ」
それを聞いたリジーナは、ニッコリ笑(わら)って言いました。
「では、私(わたし)にそのお仕事をさせてくださいな」
「なら、市長さんにたのむといいよ」
女の人はそう言うと、行ってしまいました。
リジーナは、お屋敷(やしき)の大きな扉(とびら)をノックしました。
「こんにちは。私(わたし)はリジーナです。ここで働(はたら)かせていただきます」
広間にいるネコたちは、リジーナをにらみました。
ソファーには白ネコ、まどの棚(たな)には黒ネコとブチネコ、テーブルの上には灰色(はいいろ)のネコ、テーブルの下には灰色(はいいろ)の子ネコたち、カーテンのかげにも、大きな花びんの後ろにも、たくさんのネコたちがいます。
リジーナは早速(さっそく)エプロンをつけて、仕事を始めました。
じゅうたんの上に散(ち)らばる毛も、一本一本ていねいにひろいます。
破(やぶ)れたカーテンはとりはずし、チクチクとぬいました。
その間も、ネコたちはリジーナのじゃまをします。
リジーナの前や後ろを歩きまわったり、背中(せなか)に飛(と)びついたり、わざと音をたてて柱で爪(つめ)をといだりします。
でも、リジーナは怒(おこ)ったりせず、ニコニコと笑(わら)うだけ。
そして歌を歌いながら、おいしい夕食を作り、まずはネコたちに食べさせました。
そしてネコたちの食べ終わった食器(しょっき)を洗(あら)ってから、自分はパンとスープだけの食事をしました。
それからリジーナは、ソファーに座(すわ)り、
「さあ、いらっしゃい」
と、一匹(1ぴき)ずつネコをひざに乗せて、ブラシをかけてあげたり、けがをしているネコには手当をしたり、年よりのネコはていねいになでてあげました。
すると、太った大きな茶色のネコが、人間の言葉でこう言ったのです。
「リジーナ、いつまでもネコの家にいておくれ。我々(われわれ)ネコは、そのむかし、町にネズミがあふれたときに、ネズミを全部退治(ぜんぶたいじ)したんじゃ。それで市長がネコのために、この屋敷(やしき)をたててくれた。人間のお手伝(てつだ)いさんも、一人置(お)いてくれるようになった。でも人間は、我々(われわれ)がネコだと思って、気にいらないとけとばすし、ほうきでたたいたりするんじゃ。こうしてなでてもらったのは、生まれて初(はじ)めてじゃ」
「まあ、そうだったの。ネコさんたちは、この町を救(すく)ってくれたのね」
リジーナはニッコリほほえむと、ネコたちに言いました。
「さあ、みんなで寝(ね)ましょう。私(わたし)が子守歌を歌ってあげますよ」
ネコたちは大喜(おおよろこ)びで、リジーナといっしょにベッドの中へもぐり込(こ)みました。
リジーナはすんだきれいな声で、自分で作った子守歌を歌いました。
♪星の光よ
♪優(やさ)しくそっと、ネコたちを守っておくれ
♪月の光よ
♪その輝(かがや)きを、ネコたちに与(あた)えておくれ
リジーナはネコたちが気持ちよく過(す)ごせるように、屋敷(やしき)の中も広い庭も、一生懸命(いっしょうけんめい)掃除(そうじ)をしました。
朝食も夕食も、心をこめて作りました。
仕事の合い問には、ネコを順番(じゅんばん)にひざに乗せて、歌いながらなでてやりました。
ネコたちの方も、リジーナの仕事のじゃまにならないよう注意しました。
「みんなが協力(きょうりょく)してくれるから、私(わたし)の仕事はとても楽しいわ。ありがとうね」
「いいや、みんなはリジーナの笑顔(えがお)を、見ていたいだけさ」
リジーナとネコたちは、ほんとうに仲良(なかよ)く楽しくくらしました。
そして何日かたつと、リジーナがときどきさびしそうな顔をすることに、ネコたちは気づきました。
「リジーナ、どうしたのかね。この屋敷(やしき)にいるのが、つらくなったのかね」
「いいえ、とんでもないわ。・・・ただ、私(わたし)の帰りを待っている、お母さんとねえさんに会いたくなったの」
そう聞くと、ネコたちはホッとした顔で、
「なんだ、それなら会いに帰るがいいさ」
「そうだよ、リジーナ。ああ、その前に、ちょっと、ついておいで」
ネコたちは、リジーナを地下室に連(つ)れて行きました。
地下室には、大きなツボと小さなツボがありました。
「どちらでもよいから、ツボの水で顔と手を洗(あら)ってお行き」
ネコに言われて、リジーナは小さなツボの水で顔と手を洗(あら)いました。
すると、手も顔もたちまちまっ白で、ツヤツヤとかがやきました。
そしてネコたちは、
「いままでのお礼だよ」
と、ポケットいっぱいに、金貨(きんか)をつめてくれました。
「わあ、どうもありがとう。では、行ってきます」
リジーナは、よろこんで帰りました。
お母さんとペピーナは、リジーナの帰りを待ちくたびれていました。
いいえ、本当はリジーナではなく、リジーナが持って帰るお金を、待ちくたびれていたのです。
だからリジーナが帰ると、市長からもらったお給料(きゅうりょう)と、ネコからもらったポケットいっぱいの金貨(きんか)を、全部とりあげてしまいました。
そして、リジーナが美しくなってもどって来たので、今度(こんど)はペピーナが、ネコの家へ行くと言いだしました。
次の日、ペピーナはネコの家に行きました。
ネコたちは、リジーナのねえさんだから、きっとやさしい人に違(ちが)いないと思いました。
けれど、ペピーナはネコたちがちょっと歩くと、
「毛が落ちるじゃない!」
と、ほうきで追いかけます。
夕食も自分ばかりごちそうを食べて、ネコたちには、そのわずかな残(のこ)りを、外に投げて食べさせました。
そして、ペピーナは地下室で大きいツボと小さいツボを見つけると、まよわず大きいツボに手をつっ込(こ)みました。
そのとたん、顔は油と灰(はい)でベタベタになり、うす汚(よご)れた灰色(はいいろ)の顔になってしまったのです。
ペピーナはプリプリ怒(おこ)りながら屋敷(やしき)を出て、町の通りに出ました。
そのとき、ガラガラと馬車(ばしゃ)を引いたロバが通りかかり、しっぽでペピーナの顔をたたきました。
「わっ!」
と、思ったときはもうおそく、なんとペピーナのおでこには、ロバのしっぽの長い毛が、十本ほどくっついてしまったのです。
リジーナはペピーナの帰りを、窓辺(まどべ)であみものをしながら待っていました。
そこへ、お城(しろ)の王子さまがウマに乗って通りかかったのです。
窓辺(まどべ)のリジーナを一目見ると、王子さまは、
「なんとかわいらしい人だろう。ぜひ、花嫁(はなよめ)にしたい」
と、思いました。
そして、リジーナのお母さんに、その気持ちを伝(つた)えて、
「明日、花嫁(はなよめ)にむかえにきます」
と、いったのです。
そこへペピーナが帰って来たので、お母さんはすぐリジーナを戸だなにかくしました。
それから白いベールを用意して、ペピーナにかぶせました。
王子さまにはリジーナではなく、自分のかわいがっているペピーナと結婚(けっこん)させようと思ったのです。
朝が来て、王子さまがリジーナをむかえに来ました。
お母さんはすまして、白いベールをかぶせたペピーナをウマに乗せました。
町の通りには大ぜいの人たちが出て、王子さまと白いベールの王女の結婚(けっこん)をお祝(いわ)いしました。
そのとき、ネコたちが通りに飛び出(とびだ)して、歌を歌い出したのです。
♪王子さまは、だれと結婚(けっこん)するの。
♪ベールをあげれば、すべてがわかる。
♪本当の花嫁(はなよめ)は、戸だなの中。
♪ここにいるのは、ニセ者さ。
「なんだって?」
王子さまはウマを降(お)りて、花嫁(はなよめ)の白いベールをあげました。
「あっ!」
白いベールの下には、灰色(はいいろ)の顔でおでこからロバのしっぽの生えた、ペピーナがいたのです。
王子さまは急いで戻(もど)ると、戸だなの中のリジーナを助け出してウマに乗せました。
町の人たちは、美しいリジーナに大喜(おおよろこ)びです。
王子さまとリジーナは、すぐに結婚式(けっこんしき)をあげました。
そして、町中の人をお城(しろ)によんで、お祝(いわ)いのバーティーをしました。
もちろん、あのネコたちもよばれて、リジーナの幸せを心からお祝(いわ)いしたのです。
おしまい
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