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4年生の世界昔話
ナイチンゲール
アンデルセン童話 → アンデルセン童話のせつめい
むかしむかし、中国の王さまのもとに、遠い国から一冊(いっさつ)の本が送られてきました。
そこには、
《中国の王さまのご殿(てん)は、世界一すばらしい。でも、本当にいちばんすばらしいのは、そのお庭のナイチンゲール(→なきウグイス)の声》
と、書かれてありました。
「わしの庭に住んでいるらしい、ナイチンゲールとやらを、今夜じゅうにさがし出してまいれ」
大臣(だいじん)と家来たちは、ご殿(てん)じゅうさがしましたが、どこにいるのかわかりません。
こまっていると、台所で働(はたら)く小さい娘(むすめ)が、
「その鳥なら、毎晩(まいばん)、病気のかあさんに食ベ物を届(とど)けにいくとき、森の中でいい声で歌ってくれるわ」
と、いいました。
みんなは、娘(むすめ)を先頭にゾロゾロと森へ出かけました。
森の奥(おく)から、鈴(すず)をふるような、きれいな歌声がひびいてきます。
「しっ! あれがナイチンゲールよ」
娘(むすめ)は、枝(えだ)に止まっている灰色(はいいろ)の小鳥にいいました。
「王さまに、あなたの歌を聞かせてあげて」
娘(むすめ)のたのみを聞いて、ナイチンゲールは、その晩(ばん)、王さまのご殿(てん)にやってきました。
ナイチンゲールは、王さまの前で歌いました。
王さまは、はらはらと涙(なみだ)をこぼていいました。
「なんて、すばらしいのだ。どうか、いつまでもわしのそばにいてくれ」
その日から、ナイチンゲールは、りっぱな鳥かごをいただいて、ご殿(てん)で暮(く)らすようになりました。
さて、ナイチンゲールがやっとご殿(てん)の暮(く)らしに慣(な)れたころ、遠い国から、王さまへ贈り物(おくりもの)が届(とど)きました。
それはダイヤモンドとルビーで飾(かざ)られた、美しい金のウグイスで、ネジを巻(ま)くと尾(お)をふって、それはみごとに歌うのでした。
「金のウグイスがいれば、わしは、なにもいらぬ」
その王さまのことばを聞くと、ナイチンゲールはまどからそっと飛び立(とびた)って、森へ帰っていきました。
そうして、一年たちました。
ある晩(ばん)、金のウグイスはブルルル、と、いったきり、動かなくなってしまいました。
王さまは医者や時計屋をよんで、なんとか金のウグイスを歌わせようとしましたが、むだでした。
心棒(しんぼう)の折(お)れたウグイスを、もとのように歌わせることなど、だれにもできなかったのです。
それから、五年たちました。
王さまは、重い病気にかかり、だれもが、王さまはもう助かるまいと思っていました。
新しい王さまも決まり、大臣(だいじん)や家来たちは、新しい王さまのあとばかり追いかけて歩いていました。
「たのむ。もう一度歌ってくれ。金のウグイスよ」
病気の王さまは、ベッドの中で涙(なみだ)をこぼしました。
そのとき突然(とつぜん)、鈴(すず)をふるような歌声がまどのそばでひびきました。
歌っているのは、森のナイチンゲールです。
王さまが苦しんでいることを知って、なぐさめにきたのです。
ナイチンゲールの声を聞いているうちに、王さまのからだに力がわいてきました。
ナイチンゲールは、声をかぎりに歌いました。
(もう一度、お元気になって。王さま!)
その晩(ばん)、王さまはグッスリとねむり、新しい朝がきたときには、青ざめていた冷(つめ)たいほおは、バラ色にかがやいていました。
「ありがとう、ナイチンゲールよ。これからも、たびたび飛(と)んできて、わたしをはげましておくれ」
ナイチンゲールが森へ飛(と)んでいったあと、家来たちがヘやへ入ってきました。
家来たちは、てっきり王さまが亡(な)くなったものと思って、見にきたのです。
元気になった王さまは、ビックリする家来たちをジロリと見回して、
「おはよう、みなの者」
と、いったのです。
おしまい
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