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12月28日の世界の昔話
  
  
  
  プリンのしおかげん
  アメリカの昔話 → 国情報
 むかしむかし、あるところに、プリン作りの名人のシンプソンおばさんがいました。
 ある時、シンプソンさんはパーティーをひらいて、みんなにとびきりおいしいプリンをごちそうすることにしました。
 さっそく火をおこすと、プリンをコンロにかけました。
  「そうそう。おきゃくさまがみえるんだから、この間におそうじしましょう」
 テーブルやいすのふき掃除に、ゆか掃除と、シンプソンさんは大いそがしです。
 でもしばらくして、大切なことを思い出しました。
  「そうだわ。プリン作りにだいじな、しおを入れわすれたわ!」
 それは、かくし味としての、ほんのちょっぴりのしおです。
 これがないと、プリンがおいしくできません。
  「けれども、りょう手がまっ黒ね。・・・そうだ、スウにたのむことにしましょう」。
 シンプソンさんには、五人の娘がいました。
 一番上が「スウ」
 二番目が「セイリイ」
 三番目が「パースイ」
 四番目が「ジェニイ」
 五番目が「リル」
 の、五人姉妹です。
  「スウ。プリンにしおを入れておくれ。わたしの手はまっ黒だから」
  「だめよ、お母さん。今、あたし、くつにあぶらをつけてるの」
  「そう。・・・じゃあ、セイリイ、お願いね」
  「お母さんごめん。あたし、この服をぬいあげてしまいたいの」
  「なら、しかたないわね。・・・バースイ。お前がしおを入れておくれ」
  「だめよ。あたしも自転車の手入れで、手がまっ黒よ」
  「それならジェニイ。おねがいだから、しおを入れて」
  「リルにさせてよ。今、しゅくだいをしているんだから。お母さんも知ってるでしょ、あの先生、きびしいのよ」
  「じゃあ、いいわ。・・・リル、お前、しおを入れてちょうだい」
  「だめ。今、リボンをさがしてるの。リボンがないと、何も手がつかないわ」
  「やれやれ。五人も娘がいるのに、だれもきいてくれないのかね」
 シンプソンさんは、しかたなく手をあらい、自分でプリンにしおを入れました。
 さて、シンプソンさんがふきそうじにもどると、すぐにリルは、お母さんの言いつけをことわったことをこうかいしましした。
 そこでリルは、いそいで台所へ。
 リルが出て行ったあと、ジェニイはお母さんの言いつけをきかなかったことが心配になり、台所へ。
 バースイも、自転車にのるよりもプリンを食べるのが大すきなので、お母さんにたのまれたことをやらなくちゃと思い、台所へ。
 セイリイも、言いつけをことわったのが気にかかり、ミシンをかけるのをやめて台どころへ。
 スウも、くつのあぶらなんて、いつでもつけられると思い、台所へ。
 やがて、シンプソンさんじまんのプリンが、りっぱにできあがりました。
 その夜、おきゃくさんはプリンが出てくるのを、今やおそしとまっていました。
  「いや、シンプソン家のプリンをあじわえるのも、かみさまのおかげというものですな」
 まず最初に、牧師(ぼくし→詳細)さんが、プリンを切り分けた最初の一切れをとりました。
 とくべつ大きめに切った一切れを、牧師さんが口に入れたとたん、
  「ウヒャァー!!」
 すぐに、水さしのびんにとびつきました。
 みんなは何がおこったのかわからず、ポカーンとしていました。
  「いったい、どういうことかしら?」
 シンプソンさんは、プリンの味見をして、すぐにわかりました。
  「このプリンにしおを入れたのは、お前たちのうち、いったいだれなの?」
 リルがいいました。
  「わたしよ!」
 ジェニイもいいました。
  「わたしも入れたわ!」
 バースイもいいました。
  「わたしも入れたのよ!」
 セイリイもいいました。
  「あら、わたしもよ!」
 さいごにスウもいいました。
  「わたしも!」
 五人の娘が、口々に言ったものです。
  「おやおや。プリンはしおかげんがだいじだっていうことが、これでわかったでしょう」
   シンプソンさんのこの言葉に、だれ一人はんたいする人はいませんでした。
おしまい