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2013年 1月7日の新作昔話

三峯山の犬

三峯山の犬
埼玉県の民話

 むかしから秩父にある三峯神社(みつみねじんじゃ)では、火事や泥棒よけのお守りが有名です。
 このお守りをもらう事を地元では『犬をかりる』と言いますが、それは三峯神社のお使いが犬だからです。

 ある日の事、お札をもらった男が、こんな事を言いながら山を下りていきました。
「犬をかりるとは言うが、もらえるのはいつもお札ばかりだ。
 どうせなら、本当の犬を借りたいものだ。
 いや、犬よりも強いオオカミの方がいいな。・・・うん?」
 男は何かの気配を感じて、後ろを振り返りました。
 すると少し離れた所に大きなオオカミがいて、じっとこちらを見つめているのです。
「あわわわ。オオカミだ!」
 男は怖くなって山を駆け下りましたが、オオカミはどこまでも追いかけてきて、少し離れた所からじっと男を見つめているのです。
 オオカミが襲ってくる事はありませんが、男からは決して離れようとはしません。
「どうして、ずっとついてくるのだ?! ・・・はっ、もしや!」
 男はあわてて三峯神社に戻ると、神さまに謝りました。
「先ほどは生意気な事を申し上げて、すみませんでした。
 犬もオオカミも、いりません。
 お札だけで、けっこうでございます。
 なにとぞ、お許し下さい」
 するとオオカミの姿がふっと消えて、男は無事に家へ帰れたそうです。 

おしまい

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