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3月28日の日本の昔話
大工と鬼六
木匠摎鬼六
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、あるところに、大きくて流れの速い川がありました。
頭擺頭擺,某一隻位所,有一條河水流著盡遽个大河壩。
川のこちら側に住んでいる村人たちは、向こう岸へ行くには川を渡らなければなりません。
這片析个村民愛去對面定著愛渡過河壩正做得。
でもその川には、橋がありません。
毋過,河壩無橋。
それと言うのも何度橋を作っても、大雨が降ると川の流れが激しくなって橋が流されてしまうからです。
話係恁仰講,造毋知幾多擺橋,大水一來一下仔就分佢一冲忒。
「何とかして、雨にも風にも大水にも負けない丈夫な橋をかけなければ」
「無論仰般,愛造一條毋驚落大水、大風、河壩大水个橋。」
村人たちは話し合って、日本一の橋作り名人と言われる大工に頼む事にしました。
村民大家參詳,決定拜託日本最會造橋个木匠師傅。
「よし、引き受けた!」
「好,接受!」
大工はそう言って、さっそく川岸へやって来ました。
木匠講了以後,煞煞拚到河壩唇去。
ところが、その川の流れの速さを見てびっくりです。
看著河壩水个流速,著下驚。
「こんなに流れの速い川を見たのは、始めてだ。どうしたら、これに負けない
丈夫な橋をかける事が出来るのだろう?」
「水恁急个河壩𠊎第一擺看著。愛造一條麽个大風大水都當得著恁砸个橋敢有可能?」
大工は、考え込んでしまいました。
木匠當當在該想去想轉。
すると川の真ん中から、大きな鬼がヌーッと現れました。
河壩中央,一隻大大个鬼走出來。
「話は、聞いたぞ。丈夫な橋が欲しいのなら、おれが橋をかけてやろうじゃないか」
「講个話𠊎全聽著了哦!係想愛造一條堅固个橋,𠊎來造做得無?」
「それは、ありがたい。ぜひとも、橋をこしらえてくれ」
「該還承蒙你。定著愛做好來!」
「よし、約束しよう。その代わりに橋が出来たら、お前の目玉をもらうぞ」
「好,該斯恁樣約定。橋造好你个目珠愛送分𠊎。」
鬼はそう言うと、パッと消えてしまいました。
鬼講煞後,斯毋見忒了。
次の朝、大工が川にやって来ると、もう大きくて立派な橋が出来ていました。
第二日朝晨,木匠去到河壩,一條盡大盡靚个橋造好了。
村人たちは、大喜びです。
村民非常歡喜。
けれど大工は、困ってしまいました。
毋過木匠師傅愁勞博激,
鬼との約束で、目玉を取られてしまうからです。
因為佢摎鬼約定過,目珠愛送分鬼。
(大事な目玉を、取られてたまるか)
(恁重要个目珠分人拿去做得嘎?)
大工はこっそりと、山奥へ逃げて行きました。
木匠師傅偷偷瀉走去深山肚。
すると山奥のもっと奥から、不思議な歌が聞こえて来ました。
聽著大深山肚傳來奇怪个歌聲。
♪ 大きな鬼の、鬼六さん。
♪ 高大个鬼六先生。
♪人間の目玉を、おみやげに。
♪ 人个目珠做等路。
♪ 早く帰って、来ておくれ。
♪ 遽兜仔轉來,送分𠊎。
「あれは、鬼の子どもが歌っているんだな。この山は鬼の住みかで、鬼の子どもがおれの目玉を欲しがっているんだ」
「該毋係鬼个細人仔唱个嘎?這山係鬼戴个位所,鬼个細人仔乜愛𠊎个目珠。」
歌を聞いた大工は、あわてて山から逃げ出しました。
聽著歌仔个木匠師傅,驚到會死,落䢍仔瀉出深山,
そして着いた先が、あの橋の近くだったのです。
逃到个位所堵堵係橋就近。
「しまった! またここに戻ってしまった」
「死無命哪!又倒轉來這位!」
大工は再び逃げ出そうとしましたが、そこへあの鬼が現れたのです。
木匠師傅又想瀉走,該片又出現鬼。
「どこへ逃げても無駄だ。約束通り、目玉をもらうぞ」
「走到哪都無用!照約定愛若目珠。」
「どうか、かんべんしてくれ。目玉がなくなったら、仕事が出来ねえ。仕事が出来なければ、家族が困るんだ」
「請你原諒好無?目珠無忒𠊎就無辦法做事,假使無做事,屋下人無結煞。」
大工が一生懸命に頼むと、鬼は言いました。
木匠師傅盡命牯求佢,鬼就講:
「家族か。おれにも家族がいるから、お前の気持ちはよく分かる。・・・よし、かんべんしてもらいたかったら、おれの名前を三べん言ってみろ」
「屋下人係無?𠊎乜有,你个心情𠊎完全了解。...恁樣好啦,若係你想愛𠊎原諒,𠊎个名仔唸三遍試看!」
「名前を?」
「唸名仔?」
鬼の名前なんて、大工は知りません。
鬼个名仔木匠師傅又毋知。
そこで、適当に、
佢儘採講:
「鬼太郎。」
「鬼太郎。」
「ちがう!」
「毋著!」
「鬼一郎、鬼次郎、鬼三郎、鬼四朗、鬼五郎・・・」
「鬼一郎、鬼二郎、鬼三郎、鬼四郎、鬼五郎、鬼七郎...」
「ちがう、ちがう。ちがうぞ!」
「毋著、毋著、毋著哦!」
その時、大工はあの不思議な歌を思い出しました。
該下,木匠師傅想著該條奇怪个歌仔。
「そうだ、鬼六だ。鬼六、鬼六、鬼六!」
「係哪,係鬼六!鬼六 ,鬼六,鬼六!」
大工は、大声で叫びました。
木匠師傅大嫲牯聲喊。
すると鬼はびっくりして、
鬼嗄分佢嚇著。
「何で、知っているんだー!」
「仰會恁樣,分佢知著了!」
と、逃げる様にいなくなってしまいました。
落䢍仔瀉,走著無魂無影。
おしまい
煞咧
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