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5月21日の日本の昔話
鹿でも馬でもない
毋係鹿也毋係馬
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
投稿者 「ゅ~ぅしゃ」 ゅぅしゃのでんせっ
むかしむかし、とても仲の悪い嫁さんとおばあさんがいました。
頭擺頭擺,有一對感情當毋好个家娘摎心臼。
二人は顔さえ見れば、いつも口げんかばかりしています。
兩儕若係見著面,見擺都相吵泌背。
ある日の事、おばあさんがいろりのふちに座っていると、嫁さんがそばへ座りました。
有一日,家娘坐在地爐脣,心臼乜在脣頭坐下來。
するとおばあさんは、ひとり言の様につぶやきます。
過後,家娘噥噥噥噥自言自語。
「どこぞの嫁は、飯は一人前食うが、着物一枚、縫えんそうじゃ」
「麼人个心臼斯會食飯,連一領衫褲都毋會做。」
すると嫁さんも、負けずに言い返しました。
心臼乜毋認輸,應講:
「どこぞのばあさんは、いつも嫁いじめをして楽しんでいるそうな」
「麼人个家娘,長透欺負心臼準生趣。」
「ふん!」
「hu~n53!」
「ふん!」
「hu~n53!」
二人とも、心の中で、
在佢兩儕人心肝肚都恁樣想,
(何て、憎らしい)
(仰會恁得人惱!)
(早く、死ねばいいのに)
(早死早好!)
と、思いましたが、そのくせ、いろりのそばを離れようとはしません。
明明恁樣,兩個人都毋想離開地爐。
黙ったままの時間が、長く続きました。
兩儕恬恬當久,維持盡長時間。
嫁がぼんやりと外を見ていたら、馬が一頭、歩き回っていました。
心臼戇神戇神看外背,像形看著一條馬在該走來走去。
いつまでも黙っていては、ますます気まずくなると思って、嫁さんが言いました。
一直恬恬,漸漸試著盡尷尬,心臼開嘴講:
「ほれ、ばあさん。馬が歩き回っているよ」
「你看,老阿婆。有一條馬在該走來走去。」
ところが、それを見たおばあさんは、
毋過,看著該个家娘講:
「あれは馬じゃない。鹿だ。よく見もしないで、何を言う」
と、言いました。
「該毋係馬。係鹿仔。連看也毋看清楚,講麼个東西。」
「とんでもない。あれは誰が見たって、馬じゃ。だって、頭に角がないもの」
「正毋係。麼儕來看該都係馬,連角都無。」
「いいや、鹿だ。角のない鹿だって、いくらでもいる」
「毋係,係鹿仔。無角个鹿仔不勝多。」
「あれは、馬じゃ」
「該係馬。」
「いいや、鹿じゃ」
「毋著,係鹿仔。」
「馬じゃ!」
「係馬!」
「鹿じゃ!」
「係鹿仔!」
とうとう二人は言い合いになり、そこでどっちが正しいかを決めようと、何と奉行所へ訴え出たのです。
包尾,兩儕都講,為著裁定麼儕著,去奉行所提出要求決裁。
そしてこの裁きを受けることになったのが、名裁きで有名な大岡越前だったのです。
後來接受請求个係名裁大岡越前。
さて、裁きを受ける前の晩、おばあさんは嫁さんに黙って越前のお屋敷へ行ってお願いをしました。
接受請求个前一暗晡,家娘恬恬去越前屋下拜託。
「どうか嫁の前で、わたしたちが見たのは鹿だと言って下さい。この裁きに負けると、嫁がますますつけあがります」
「請你在𠊎心臼面前摎佢講,𠊎兜看著个係鹿仔。若無,心臼會越來越尚勝。」
「よし、わかった」
「好啦,𠊎知了。」
おばあさんが帰ると、今度は嫁さんがこっそりとやって来ました。
家娘轉來後,這下換心臼偷偷去。
「どうかばあさまの前で、わたしたちが見たのは馬だと言って下さい。この裁きに負けますと、ばあさまがますます頑固になります」
「請你在𠊎家娘面前講,𠊎兜看著个係馬。若無,家娘面會越來越硬殼。」
「よしよし、わかった。わしに任せておけ」
「好啦,𠊎了解,交分𠊎。」
越前の言葉を聞いて、嫁さんは大喜びで帰っていきました。
聽著越前个話後,心臼歡喜壢天走轉去。
次の日の朝、二人は奉行所へとやって来ました。
第二日朝晨,佢兜來到奉行所。
(今日こそ、嫁をぎゃふんと言わせてやる)
(今晡日定著,愛分心臼一擺教訓!)
(今日こそ、ばあさんをぎゃふんと言わせてやる)
(今晡日定著,愛分老阿婆一擺教訓!)
おばあさんも嫁さんも、越前には話がついているので、自分が負けるはずはないと思って、にんまりと笑いました。
家娘摎心臼都在越前先講好,所以認為自家毋會輸,笑咪咪。
さて、二人がお白州に座ると、越前が出て来て言いました。
佢兜坐在裁判所,越前出來講︰
「それでは、二人の言い分、どっちが正しいかを決めよう。まず、ばあさんから申してみよ」
「這下,照你兩儕講个,來決定麼儕正著。首先,家娘先講。」
おばあさんが、進み出て言いました。
家娘行出來講:
「大岡さまに申し上げます。わたしたちが見たのは、鹿に間違いないと思います」
「報告大岡大人。𠊎兜看著个,𠊎想定著係鹿仔。」
すると、越前が言いました。
過後越前講:
「いいや、あれは鹿ではない。」
「毋係,該毋係鹿仔。」
「そ、そんな」
「該,該恁樣。」
おばあさんの顔が、青くなりました。
家娘个面變青里里。
それを見て、嫁さんが勝ちほこったように前へ進み出ました。
看著這情形,心臼像贏定樣向前行。
「大岡さま、それは鹿ではなく、馬に間違いないと思います」
「大岡大人,該毋係鹿仔,𠊎想定著係馬。」
「いいや、あれは馬でもない」
「毋係,該毋係馬。」
今度は、嫁さんの顔が青くなりました。
這擺,換心臼个面變青里里。
越前は、目を丸くする二人に言いました。
越前目盯盯摎佢兩儕講:
「裁きを申し渡す。あれは鹿でも馬でもなく、馬鹿というものじゃ」
「𠊎提出裁決,佢毋係鹿仔也毋係馬,係戇仔『馬鹿(baga) 』。」
「馬鹿?」
「戇仔『馬鹿(baga) 』?」
「馬鹿でございますか?」
「戇仔『馬鹿(baga) 』係無?」
「ああ、馬鹿じゃ。馬や鹿で言い争いをするなど、お前たち二人は大馬鹿じゃ!」
「啊,戇仔『馬鹿(baga) 』。為著馬抑鹿相詏仔,你兩個都係馬鹿(baga)『戇仔』!」
「・・・・・・」
「......」
「・・・・・・」
「......」
二人とも越前に大馬鹿と言われて、しょんぼりしました。
佢兩儕分越前講係戇仔『馬鹿(baga) 』,斯頭犁犁。
越前は、言葉を続けました。
越前繼續講:
「だが、二人とも馬鹿でよかったのう。いくら仲の良い嫁姑でも、そのうちに仲が悪くなる事もあろう。しかし、お前たちは大馬鹿と言われるほどの仲だから、これからは仲良くなるしかないではないか」
「但係,你兩儕都係戇仔『馬鹿(baga) 』。無論心臼摎家娘有幾親密,成時乜會打逆著。你兜感情分人講戇仔『馬鹿(baga) 』个程度?過後毋好兜做毋得係無?」
それを聞いて、おばあさんも嫁も、自分たちがくだらないことで喧嘩をしていたのが恥ずかしく思いました。
聽著這兜話,無論家娘抑係心臼,因為細事情相吵泌背感覺盡見笑。
「ごめんよ。つまらない意地を張って、あの時いたのは、きっと馬だよ。だって、角がなかったんだもの」
「失禮哦。一點仔事情,恁硬殼,該下確實係馬,無生角。」
「いいえ、おばあさん。あれはきっと、角がない鹿だったんですよ」
「毋係,啊姆。該定著係無生角个鹿仔。」
「お前は、いい嫁だね。これからは、ずっと仲良くしていこうね」
「你係一個好心臼。從這下開始,愛好好相處。」
「こちらこそ。おばあさん、今度、着物の縫い方を教えて下さいね」
「𠊎乜共樣。阿姆,以後請教𠊎仰般攣和服。」
「ああ、いいとも、いいとも」
「啊,做得,好啊。」
こうして急に仲良しになった二人を見て、越前は満足そうに言いました。
看著一下仔就感情變好个兩個人,越前當滿意講:
「うむ。これにて、一件落着!」
「m11。這下,又辦好一件事情!」
おしまい
煞咧
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