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5月30日の日本の昔話
孝行もち屋
有孝个粢粑店頭家
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、きっちょむさんと言う、とてもゆかいな人がいました。
頭擺頭擺,有一個安到吉四六先生个人,非常樂線。
さて、そのきっちょむさんが、ぶらぶらと一人旅に出かけた時のことです。
續下來係吉四六先生一儕人悠閒去旅行个故事。
ある町に来てみると、どこかのでっちらしい一人の小僧が、橋のたもとにたたずんで、しくしく泣いているのです。
來到某個城市時節,看著一個毋知哪來个細門徒企在橋頭sud sud 滾噭。
子ども好きなきっちょむさんは、すぐに駆け寄ると声をかけました。
當惜細人仔个吉四六先生煞煞走過去,講:
「おいおい、どうして泣いているんだ?」
「噯,噯,做麼个噭呢?」
急に声をかけられて小僧はびっくりしましたが、きっちょむさんのやさしそうな顔を見ると安心したのか、涙をふくと事情を話してくれました。
這個細人仔忽然間聽著人喊个聲嗄著驚,毋過,佢看著吉四六先生慈祥个面容,感覺盡放心敢,緊捽目汁緊講:
「わたしは、すぐそこの、もち屋の小僧で、重松(しげまつ)というものです。
「𠊎係就近該位粢粑店个門徒,安到重松。
実は昨日、五郎兵衛(ごろべえ)さんというお金持ちのご隠居さんから、お祝いに使うからと、もちを五十枚用意するようにと頼まれたのですが、
實際上,昨晡日,一個有錢人安到五郎兵衛个居士,來訂五十隻慶典愛用个粢粑,
先ほど、出来上がった五十枚のもちを持って届けに行ったところ、どう数え間違えたのか、もちは四十九枚しかないのです。
頭下,做好五十隻送去分佢時節,仰般算會舞毋著?粢粑正四十九隻定定。
するとご隠居さんが、火の様に怒り出して」
居士火當著。」
「なるほど。それで、何と言って怒ったんだい?」
「係恁樣哦。有講為著麼个會發閼呢?」
「はい、『祝いのもちに、よりにもよって四十九とはなんだ! 四十九は、始終苦(しじゅうく)と言って、このうえもない縁起の悪い数だ!』と」
「有,『慶典愛用个粢粑,仰會偏偏做四十九隻,四十九讀做(しじゅうくshijuku)摎始終苦(日語shijuku)共音!四十九係最不幸个數字!』」
「それは、もっともな言い分だな」
「該係一個盡好个理由。」
「はい。そこでわたしは、すぐ店に戻って、残りの一枚を持ってくるといってあやまりましたが、ご隠居さんは、どうしても聞き入れてくれません。
「係,所以𠊎講轉去店仔,拿該伸著該隻來分佢,但係居士仰般都毋肯,
そして、『こんな縁起の悪いもちは、早く持って帰れ!』と、もちをみんな突き返されてしました。
還講『這頭彩毋好个東西,遽遽拿轉去!』,粢粑全部退轉去。
しかし、このまま店にもちを持って帰れば、主人からこのもちを、わたしに買い取れと言うに違いありません。
但係,若係𠊎摎粢粑拿轉店仔去,頭家定著喊𠊎自家買起來。
でも、わたしの家は、母一人で貧しい暮らしをしているから、そんなお金はありません」
𠊎屋下斯吾哀仔一儕人過等窮苦个日仔,無錢好買。」
少年の足元を見ると、なるほど、てんびん棒と、もちを入れた箱が積み重ねてあります。
看著細門徒个腳脣,你會發現有一支擔竿摎一隻張到淰淰浡浡个粢粑籠仔。
きっちょむさんは、気の毒そうに少年ともち箱を見比べると、何か良い方法は無いかと考えました。
吉四六先生盡遺憾樣看下籠仔摎細門徒,想看有麼个好方法無?
「四十九は始終苦で、縁起が悪い数だが、それを縁起のいい数にするには・・・。そうだ!」
「四十九讀做(shijuku)始終苦(shijuku)係頭彩毋好个數字,毋過俚仰般變做好運數字呢...?有了!」
そして名案を思いついて、にこにこしながら小僧に言いました。
佢想出一隻好計,笑咪咪去摎細門徒講:
「重松さん、わしがお前と一緒に行って、そのもちをご隠居さんにおさめてやろう」
「重松先生,𠊎摎你共下去,喊居士接受該兜粢粑。」
「しかし、あのご隠居さんは、頑固な人だから、一度言い出したら誰が行ってもだめですよ」
「毋過,居士係一個當硬殼个人,佢講出來个決定麼儕去講都無用。」
「なに、わしにまかせるがいい。それに、うちの村の庄屋さんもそうだが、そう言う頑固な人をやり込めるのが、また楽しいんだ」
「麼个,交分𠊎斯好。就像𠊎該村个村長乜係恁樣,應付這種硬殼个人也當生趣。」
こうしてきっちょむさんと重松は、五郎兵衛隠居の家にやってきました。
吉四六先生摎重松來到五郎兵衛居士屋下。
ところが隠居は、重松の顔を見たとたん、
但係,居士看看阿著重松个面就大聲講:
「しょうこりもなく、またやって来たのか! 縁起が悪い、帰れ帰れ」
と、どなりつけました。
「還無辦法,又倒轉來嘎!頭彩毋好,轉去!轉去!」
すると後ろにいたきっちょむさんが、ニコニコ顔で前に進み出ました。
在後背个吉四六先生笑咪咪行到頭前。
「ご隠居さん、おめでとうございます!」
「居士先生,恭喜!」
「はあ?きさまは、誰だ?」
「ha24?你係麼儕?」
「はい、わたしは重松の兄で、ただいま、もち屋に手伝いにまいっている者でございます」
「係哦,𠊎係重松个阿哥,這下,受著粢粑店个委託,摎佢𢯭手个人。」
「それが、何をしに来た」
「該你來做麼个?」
「実は、もちは五十枚とのご注文でしたが、お祝いという事なので、わざわざ一枚少なく持ってあがらせたのでございます」
「實際上,這係一份有五十隻粢粑个訂單,為著這擺慶祝活動,特別少拿一隻。」
「何を言う!四十九は、始終苦(しじゅうく)と言って、この上もない縁起の悪い数だ。商売人のくせに、そんな事もわからぬのか!」
「講麼个!四十九摎始終苦共音,無比佢較毋吉祥个數字,生理人連這種事都毋知嘎!」
「いいえ、ご隠居さん。世の中に四十九という数ほど、縁起の良いものはありませんよ」
「毋係,居士先生。世上四十九這數字,並毋係頭彩毋好个東西。」
「なぜじゃ!?」
「仰會恁樣講!?」
「だって七七、四十九といって、四十九は、七福神が七組も集まった数ではありませんか」
「因為人講七七四十九,毋係七組七福神鬥出來个數字咩?」
きっちょむさんがこう言うと、ご隠居さんは、しばらく考えていましたが、やがてなるほどと思ったのか、いっぺんに機嫌を直して言いました。
吉四六先生恁樣講个後,居士先生思考一段時間,像形當有道理,他一下仔心情斯變好囉。
「うーむ、七福神が七組か。確かにこれは縁起がよい! 気に入ったぞ! よし、早くもち代を払ってやろう。それに、お前たちにも祝い物をあげよう。さあ、何なりと望め!」
「m11,七組七福神,確實這係好頭彩!歡喜!好遽撿錢分佢,另外,賞兜東西分大家,想愛麼个!」
「それはありがとうございます。ではわたしどもも縁起が良いように、大黒さまのしきものにいたしますから、たわらのお米をいただきとうございます」
「承蒙你。𠊎兜乜想愛有好頭彩,想愛財神爺座墊仔稈袋裡肚个米。」
「よしよし、ではお米を一俵あげよう」
「好,好,分你一袋米。」
ご隠居さんは、さっそく下男に言いつけて、お米を一俵、持って来させました。
居士先生煞煞喊下背人拿一袋米來分佢。
すると、きっちょむさんは、ご隠居さんに頭を下げて、こう言いました。
吉四六先生摎居士先生行禮,講:
「ご隠居さん、ありがとうございます。でもこれでは、大黒さまのかたひざ分しかありませんよ。どの絵を見ても、大黒さまは、二俵並べて、座っておられます」
「感謝居士先生,毋過這斯係財神爺一隻膝頭份定定。不管你看哪張相,財神爺都係坐在兩包排比比个稈袋頂。」
「あっ、なるほど。しかしお前、ただのもち屋ではないなあ」
「啊,有影。你毋單淨係一個粢粑店頭家哪。」
ご隠居さんは、きっちょむさんのとんちに感心しながら、また一俵を持って来させました。
居士先生對吉四六先生个伶俐當佩服,又拿出另外一包米。
こうして無事にもちをご隠居さんに収めたどころか、お米を二俵も手に入れたきっちょむさんは、深々と頭を下げてお礼を言う重松に、
恁樣順利摎粢粑交分居士先生,又得著兩袋米个吉四六先生,低下頭對重松行禮講:
「それはそうと、おれはまだ旅の途中だから、こんな重たい物はいらないよ。では、がんばりなよ」
と、二俵とも重松にくれてやり、また旅を続けたという事です。
「該就到這,𠊎仍愛繼續吾旅程,這恁重个東西無需要,加油哦!」
兩袋都送分重松,繼續旅行。
おしまい
煞咧
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