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7月14日の日本の昔話
雷さまの病気
雷公个病
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
投稿者 「もちがたる。」 もちがたる。【読み聞かせ】【睡眠用】
むかしむかし、下野の国(しもつけのくに→栃木県)の粕尾(かすお)と言う所に、名の知れた医者としても有名な和尚(おしょう)さんが住んでいました。
頭擺頭擺,在下野國(Shimotsuke no Kuni栃木縣)个粕尾(Kasuo) ,有一個當有名个醫生也係有名和尚。
夏の昼さがりの事、和尚さんは弟子の小坊主を連れて病人の家から帰る途中でした。
一隻熱天當晝過,和尚摎厥門徒細沙彌共下對病人屋下轉來个路項。
「和尚さま、今日もお暑い事で」
「和尚師父今晡日還熱哦。」
「まったくじゃ。しかも蒸し暑くて、汗が乾かん」
「有影還熱,又翕、汗毋會燥。」
二人は汗をふきながら歩いていましたが、突然、ポツリポツリと雨が降り始めて、みるみるうちに水おけをひっくり返した様な夕立になってしまいました。
兩儕行到汗流脈落,忽然間開始落水了,看等喊盆大水像用倒樣仔个臨暗仔。
「急げ!」
「遽兜!」
「はい」
「好!」
大雨と一緒に、いなびかりが走りました。
拚大水同時,又兼𥍉爧。
ゴロゴロゴロー!
Gonlong!
「きゃー、かみなり!和尚さま、助けてー!」
「gia~,響雷公、救命哦!」
「これっ、大事な薬箱を放り出す奴があるか!」
「這,哪有人像你這戇仔會摎恁重要个藥箱㧒忒?」
「すみません。でもわたくしは、かみなりが大嫌いなもので」
「失禮,因為𠊎當惱響雷公。」
ゴロゴロゴローッ!ドカーン!!
goro goro goro--!dokan!
すぐ近くの木に、かみなりが落ちたようです。
雷公黏時像落在就近个樹仔頂。
「わーっ!和尚さま!」
「哇!和尚師父!」
「だから、薬箱を放り出すな!」
「所以講毋好摎藥箱㧒忒!」
和尚さんは怖がる小坊主を引きずって、やっとの事で寺へ帰ってきました。
和尚師父拖等嚇著个細沙彌,總算轉到廟。
「和尚さま。早く雨戸を閉めてください」
「和尚師父。請你煞煞摎窗門枋關起來。」
小坊主が言いますが、和尚さんはいなずまが光る空をじっと見上げています。
細沙彌恁樣講,和尚師父直直臥頭看等因𥍉爧晟光个天空。
「ほほう。このかみなりさんは、病気にかかっておるわい」
「Hoho,這個雷公發病仔敢?」
「へっ?和尚さまは、かみなりの病気までわかるのですか?」
「he24?你連雷公个病也知係無?」
「うむ、ゴロゴロという音でな」
「m11,聽這goro goro个聲斯知。」
さすがは、天下の名医です。
難怪,係世界有名个醫生。
その夜、ねむっている和尚さんの枕元に、こっそりと忍び寄った者がいます。
該暗晡,有一個人偷偷走到當當在該睡目个和尚師父眠床頭。
それはモジャモジャ頭から二本のツノを生やし、トラ皮のパンツをはいたかみなりさまでした。
該個人在毛鬞鬞个頭那頂生出兩支角,著等老虎皮水褲頭个雷公。
でも、何だか元気がありません。
毋過,仰會恁無元氣,
和尚さんのそばに座って、
坐在和尚師父脣頭,
「・・・ふーっ」
と、ため息をついているのです。
「...fuuー」滾,敨大氣。
それに気づいた和尚さんは薄目を開けて様子を見ていましたが、やがて先に声をかけました。
注意到這个和尚師父,目陰目陽看著佢个樣仔,黏時開聲講:
「どうかしたのか?何か、お困りの様じゃが」
「仰般?有麼个困難係無?」
和尚さんが声をかけると、かみなりさまは和尚さんの前にガバッとひれふしました。
和尚師父講个時節,雷公在和尚師父面前跪落去。
「わ、わしは、かみなりでござる」
「𠊎,𠊎係雷公。」
「見ればわかる。それで、何か用か?」
「看著斯知,有麼个事?」
かみなりさまは、涙を流しながら言いました。
雷公先生緊流目汁緊講。
「この二、三日、具合がおかしいのです。どうか、わしの病を治してくだされ。お願いします」
「這二三日,身體無幾好。請你摎治療,拜託你。」
「やっぱりのう」
「果然係恁樣。」
「それでその・・・、天下の名医ともなれば、お代はお高いでしょうが。こんな物で、いかがでしょうか?」
「該,...你係世界名醫,你个醫藥費一定非常貴。這息東西仰般?」
かみなりさまはそう言って、小判を三枚差し出しました。
雷公先生講煞,拿出三隻金幣。
しかし和尚さんは、知らん顔です。
但係,和尚師父趜詐毋知樣。
「えっ!これでは、たりませぬか」
「e24!這兜毋罅係無?」
かみなりさまは、小判を五枚差し出しました。
雷公拿出五隻金幣。
すると和尚さんはその小判をちらりと見て、『ふん!』と鼻で笑いました。
過後,和尚師父睞一下金幣,在鼻空肚笑『hum!』。
「わしの治療代は、うーんと高いのじゃ」
「𠊎收个醫藥費非常貴。」
「そうでございましょう。何しろ、天下の名医でございますし。それではさらに、小判を追加して」
「係啊,無論仰般,世界一流个醫生,所以就愛添加兜錢。」
「いやいや。金の話は後にして、まずはそこへ横になりなさい」
「毋係,毋係。這下毋好講錢,先睡等。」
「えっ、診てくださるんですか!」
「e24,你愛摎𠊎醫嘎!」
かみなりさまは、大喜びです。
雷公非常歡喜。
和尚さんは腕まくりをすると、かみなりさまの体を力一杯押したり、もんだりして調べます。
和尚師父攎起衫袖,出力推雷公膴身檢查。
「ひゃー!ひぇー!うひょー!痛い痛い!助けてくれ~!」
「hia~!hie~!uhio~!痛!恁痛!救命!」
かみなりさまは、あまりの痛さに大声をあげました。
雷公痛到大聲噦嘶。
その大声に驚いて、小坊主は部屋のすみで震えています。
細沙彌聽著大聲噦嘶,在間角驚到必必掣。
「これ、小坊主!そんなところで、何をしておる。
「噯,細沙彌!在該位做麼个!
今度はお灸(きゅう)をするから、早く道具を持ってまいれ!」
這下愛摎佢針灸,請煞煞拿工具過來!」
急に声をかけられて、小坊主はビックリです。
忽然間大聲咄,細沙彌嗄嚇著。
「和尚さま。何で、かみなりなんぞの病気を診るのですか!かみなりは怖いから、嫌です!」
「和尚師父,愛摎雷公醫病係無?雷公當得人驚,毋愛過去!」
「何を言うとる!さあ、お前もお灸の手伝いをしろ!」
「講麼个!你乜愛來幫忙針灸!」
「和尚さま。あんな人迷惑なかみなりなぞ、いっそ死んでいただいた方がよいのでは」
「和尚師父,恁得人惱个雷公,放佢死較贏。」
「ばっかも~ん!!どんな者の病気でも診るのが、医者のつとめじゃ!」
「大戇牯!無論麼儕个病乜愛摎佢醫,看病係醫生个責任!」
「うぅー、わかりました」
「m11,𠊎了解了。」
和尚さんは小坊主からお灸を受け取ると、かみなりさまにお灸をすえました。
和尚師父對細和尚該接過針,開始愛摎雷公插針。
「うお~っ、あちちち、助けて~!」
「uo~,azizizi,救命哦!」
あまりの熱さに、かみなりさまは大暴れです。
因為昶燒,雷公當毋著。
ところがお灸が終わったとたん、かみなりさまはニッコリ笑いました。
針過後,雷公開容笑面。
「おおっ!痛みがなくなった。体が軽くなった。お灸をすえたら、もう治ったぞ!」
「哦!毋會痛了。身體變輕鬆了。針灸後,好了!」
さすがは、天下の名医。
確實,係世界有名个醫生。
「ありがとうございました!・・・で、お代の方は、さぞお高いんでしょうなぁ」
「承蒙!...該,醫藥費,定著無便宜敢?」
「治療代か? 治療代は、確かに高いぞ。・・・じゃが、金はいらん」
「醫藥費係無?醫藥費確實當貴,...毋過,毋使錢。」
「じゃあ、ただなんですか!?」
「該,免費係無?!」
「いいや、金の代わりに、お前にはしてもらいたい事が二つある。
「毋係,無收錢,毋過愛請你做兩件事。
一つは、この粕尾(かすお)では、かみなりがよく落ちて、人が死んだり家が焼けたりして困っておる。
第一件係粕尾這位,長透落雷,毋只人死忒屋也燒忒,盡無結煞。
これからは、決してかみなりを落とさない事」
這下開始,絕對做毋得落雷。」
「へい、へい、それは、おやすい事で」
「he11,he11,這盡簡單。」
「二つ目は、この辺りを流れる粕尾川の事じゃ。
「第二件係流過這就近个粕尾川个問題。
粕尾川は、大雨が降るたびに水があふれて困っておる。
逐擺落大水粕尾川都會湓出來,盡無結煞。
川が、村の中を流れておるためじゃ。
河川做毋得流經村莊。
この川の流れを、村はずれに変えてほしい。
𠊎想拜託你摎這條河壩个水流改到村莊郊外去。
これが、治療代の代わりじゃ。
這係用醫藥費摎你斗換个。
どうだ?出来るか?」
仰般?做得無?」
「へい。そんな事でしたら、このかみなりにお任せくだせえ」
「he53。若係這種事情,該就交分𠊎這雷公。」
どんな無茶を言われるかと心配していたかみなりさまは、ホッとして言いました。
雷公愁有人會講麼个無道理个話,敨下大氣,講:
「それではまず、粕尾の人たちに、お札を配ってください。
「該恁樣,首先告示單發分粕尾村民。
お札を家の門口に、はってもらうのです。
摎告示單貼在門口。
それから粕尾川ですが、流れを変えてほしい場所に、さいかち(→マメ科の落葉高木)の木を植えてください。
然後,在粕尾川希望改變个位所種皂莢樹(Acacia Wood)。
そうすれば、七日のうちにはきっと。
恁樣做好,七日內定著改變。
・・・では、ありがとうございます」
...斯恁樣,非常感謝。」
かみなりさまはそう言うと、天に登ってしまいました。
雷公講煞後就升天去了。
和尚さんは、さっそく村人たちをお寺に集めてお札を配りました。
和尚先生黏時召集村民到廟坪並發告示單。
そして山のふもとの目立つ位置に、さいかちの木を植えました。
在山腳下个種了皂莢樹。
さて、その日はとても良い天気でしたが、にわかに黒雲がわき起こったかと思うといなずまが光り、ザーザーと激しい雨が降り出しました。
該日天時當好。忽然間天烏地暗,𥍉爧拚大水。
まるで、天の井戸(いど)がひっくり返った様な大夕立です。
就像天頂个井貶轉來樣、像風搓水恁大。
村人たちは和尚さんから頂いたお札をはって雨戸を閉めて、雨が止むのをジッと待っていました。
村民用和尚師父分个告示單貼等。關核窗門枋,等待水停。
こうしてちょうど七日目、あれほど激しかった大雨がピタリと止んだのです。
就恁樣,直直到第七日,大水正全停忒。
雨戸を開けると黒雲はなくなり、太陽が顔を出しています。
打開窗門枋時節,烏雲散忒,日頭出來了。
不思議な事に、あれだけの大雨にもかかわらず、かみなりは一つも落ちませんでした。
奇怪个係,該恁大水,一擺雷公都無落下來。
「あっ、あれを見ろ!」
「啊,看該隻!」
村人が指さすを方を見ると、昨日まで流れていた粕尾川がきれいに干上がり、流れを変えて、さいかちの木のそばをゆうゆうと流れているではありませんか。
照村民指个方向看過去,到昨晡日以前一直有水流个粕尾川變燥燥,水流改變,順等皂莢樹脣頭流過去。
これでもう、村に洪水(こうずい)が起こる心配はなくなりました。
毋使再過擔心做大水了。
かみなりさまは、和尚さんとの約束を果たしたのです。
雷公兌現對和尚个承諾。
それからというもの、粕尾の里では落雷の被害は全くなくなったという事です。
聽講,自該擺以後,粕尾村毋識再過受著落雷个災害。
註: 井戸(いど)とは、飲み水や生活用水を得るために、地下水をくみ上げるための施設です。
註: 井戸係為著取著食个水、生活用水、在地泥下抽水个設施。
日本は地下水が豊富なため、地面を掘れば、簡単に井戸を作ることができました。
日本地下水盡多,地泥下儘採挖斯做得有井。
現在残っている井戸の多くが、ポンプを使った吸い上げ式ですが、江戸時代の井戸は、ロープにつるした桶で水をくみ上げる、汲み取り式です。
這下還伸當多井,用泵抽个方式。
生活には欠かせないものなので、井戸に関する昔話も数多く存在します。
生活上做毋得無个,所以有關井个傳說故事非常多。
おしまい
煞咧
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