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9月3日の日本の昔話
かしこい子ども
聰明个細人仔
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、太吉(たきち)と言う子どもが、おじいさんと二人で暮らしていました。
頭擺頭擺,一個安到太吉个細人仔摎厥公戴共下。
この太吉はとてもかしこい子どもで、村のみんなから、
這個太吉係一個當聰明个細人仔,村民大家都阿𧩣。
「日本中を探しても、あんなにかしこい子はおらん」
と、言われるほどです。
「全日本,乜尋無恁聰明个細人仔。」
そのうわさを聞いた殿さまが、
聽著風聲个國主,
「よし。その小僧をよびつけて、一度ためしてみよう」
と、太吉を城によんで、一つのようかんを二つに切って食ベさせました。
「好。喊該個細猴仔來城肚,試一擺看。」
斯摎太吉喊到京城,一條羊羹切做兩半拿分太吉食。
太吉がようかんを食べ終わると、殿さまがたずねます。
太吉食過羊羹以後,國主問佢。
「ようかんは、おいしかったかな?」
「羊羹好食無?」
「はい、とてもおいしいようかんでした」
「好,當好食。」
「そうか、ではどちらのようかんが、よりおいしかったかな?」
「正經係無?該哪截較好食?」
どちらも同じようかんなので、どちらもおいしさは一緒です。
兩截乜共條羊羹,所以兩截共樣好食。
太吉がどう答えるか殿さまがじっと見ていると、太吉は『ポン』と両手をうって、
太吉會仰般回答呢,國主目金金緊捉佢看个時節,太吉『Pon』聲拍手,
「お殿さま。どちらの手がなりましたかな?」
と、言いました。
講:「國主大人,哪隻手響?」
これは、見事な切り返しです。
這係一隻當好个反駁。
殿さまは太吉のかしこさをみとめると、太吉にたくさんのほうびを持たせて返しました。
國主大人看著太吉个智慧時節,賞當多獎品分佢帶轉去。
さて、ある日の事。
有一日。
おじいさんが一人で畑に出てクワで土をおこしていると、馬に乗った侍(さむらい)がやってきました。
老人家一儕人去園用钁頭改泥,武士騎馬過來。
侍は馬の上から、おじいさんに言いました。
武士坐在馬背囊頂摎老人家講︰
「これ、じじい。お前は畑をおこしておるようじゃが、けさからいくクワおこしたか言ってみろ」
「噯,老人家。你像形在園改泥係無,朝晨到這下你改幾多钁頭,講看啊。」
そんな事をいきなり聞かれても、わかるはずがありません。
忽然間問到這事情,無法度回答。
おじいさんがポカンとしていると、
老人家發琢呆時節,
「また、明日まいる。それまでに、とくと考えておけっ!」
と、言い残して、侍は行ってしまいました。
「韶早𠊎會再過來,來到以前,好好想!」
留下這句話,武士就走了。
ちょうどそこヘ、孫の太吉がやって来ました。
堵好就在該下,孫仔太吉行過來。
「じいちゃん、どうした?うかぬ顔をしとるが」
「阿公,麼个事情?有心事樣。」
「うん。実はな・・・」
「m11。實際上...」
おじいさんがさっきの出来事を説明すると、太吉は笑って言いました。
阿公摎頭先發生个事情說明後,太吉笑笑講。
「なーんだ。そんな事、困る事はないぞ。
「麼个?這事情毋係困難个事啊。
どうせ証拠(しょうこ)はないんだから、てきとうに、そうだな、
反正無證無據,儘採講,係哊,
『五万八百クワおこした』と、言えばいいんだ。
『改了五萬八百钁頭』恁樣講斯好。
そしてその侍に、『あなたのお馬の足は、ここにおいでになるまでいく足あがりましたか?
と、そう聞いてやるんじゃ」
續等,反問該個武士『你个馬腳行到這位行幾多步?』」
「なるほど」
「𠊎知了。」
次の日、おじいさんが畑で待っていると、きのうの侍がやってきました。
第二日,老人家在園項等時節,昨晡日該個武士來了。
「これ、じじい。きのうのクワの数は、思い出したか?」
「噯,老人家。昨晡日个钁頭數記得無?」
「ヘえ、思い出しました。きのうは、五万八百クワおこしました。ところでお侍さま、あなたのお馬の足は、ここヘおいでになるまでにいく足あがりましたかな?」
「e53,記得。昨晡日改了五萬八百钁頭。著,武士,你个馬腳行到這位行幾多步?」
「なに?」
「麼个?」
聞かれた侍はしばらく考えていましたが、やがてニヤリと笑いました。
分佢問著个武士想一下過後,笑笑仔講。
「それは、お前の考えではあるまい」
「該毋係你个意思。」
「はい、孫の太吉が、教えてくれましたので」
「係哦,吾孫仔太吉教𠊎个。」
おじいさんが正直に答えると、侍はふところから小さな紙包みを取り出しました。
老人家老實回答个時節,武士對袋肚拿出一隻細紙袋仔。
「評判通り、太吉はかしこい子じゃ。ほうびに、これを一ぷくとらせよう。殿さまからのいただき物じゃ」
「摎傳說共樣,太吉係一個聰明个細人仔,這分佢做獎品,這係國主送个禮物。」
「これは?」
「這係?」
「その薬を、お前の孫に飲ませてみよ。もっともっと、かしこい子になるぞ」
「這藥仔拿分若孫仔食,佢會變還較、還較聰明。」
侍はそう言うと、帰っていきました。
武士恁樣講後,斯轉去了。
おじいさんは喜んで家に帰ると、太吉に薬を渡して言いました。
老人家乜當歡喜轉屋下,摎藥仔拿分太吉,講︰
「太吉や、この薬を飲むと、もっともっとかしこい子になるそうな」
「太吉,你若係食這藥仔,你會變還較聰明。」
しかし太吉は、「じいちゃん、そんな薬が、あるはずないだろう」
と、言って、薬を庭ヘすてると、おじいさんに言いました。
但係,太吉講:「阿公,哪有這種藥仔。」
斯摎藥仔㧒忒,又講:
「じいちゃん、もしまた侍が来たら、こう言うんだよ」
「阿公,若係武士再過來,愛恁樣講。」
次の日、おじいさんが畑仕事をしていると、またあの侍がやってきました。
第二日,老人家在園做事時節,武士又來了。
「これ、じじい。きのうの薬を、太吉に飲ませたか?」
「噯,老人家。昨晡日个藥仔你有拿分太吉食無?」
侍が聞いてきたので、おじいさんは太吉に言われたとおりに言いました。
因為武士問佢,所以老人家照太吉教个話講。
「はい、いただきましてございます。
「有,承蒙你。
あの薬を飲みますと、孫は今までよりもかしこうなりました。
食了該藥仔後,吾孫仔變比頭過還較聰明。
おかげさまで、こんなうれしいことはござりません」
好得你,無比這較歡喜个事情。」
おじいさんがうれしそうにおじぎをすると、侍は不思議そうに首をかしげました。
老人家像形當歡喜樣行禮時節,武士當奇怪个搖搖頭。
「はて、そんなはずは」
「係啊,這應該無可能。」
侍はきのうと同じ薬を取り出すと、自分でコクンと飲みました。
武士拿出摎昨晡日共樣个藥仔,自家gud聲食落去。
すると、間もなく。
過後,無幾久。
ドデン!
gongdong!
侍は馬から落ちて、死んでしまいました。
武士跌下馬,嗄死忒了。
おしまい
煞咧
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