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10月20日の日本の昔話
カモ汁
野鴨湯
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、吉四六さんと言う、とてもゆかいな人がいました。
頭擺頭擺,有一個安到吉四六个人,非常樂線。
ある時、庄屋(しょうや)さんが吉四六さんのところへ使いを寄こしました。
有一日,村長派一個小使仔來吉四六該位。
「カモをたくさん取ったので、今夜カモ汁をごちそうするから来る様に」
「抓著當多隻野鴨仔,暗晡夜愛煮野鴨湯請大家,愛來吓!」
(ほう。あのけちん坊の庄屋さんがカモ汁をごちそうするなんて、珍しい事もあるものだ。よほど、たくさんのカモを取ったに違いない。それともまた、骨董(こっとう→価値のある古い美術品)の自慢かな?)
(該個齧察鬼村長會煮野鴨湯請大家,還難得哦,定著抓著當多隻野鴨仔,抑愛係展厥骨董?)
吉四六さんは思いきり食べてやろうと思って、昼ご飯も夕ご飯も食べないで庄屋さんのところへ出かけました。
吉四六毋單淨當想食,所以,無食晝也無食夜斯走去村長該位。
「おう、よく来てくれたな」
「哦,來著還堵好哪。」
庄屋さんは吉四六さんを部屋にあげると、カモを取った時の自慢話(じまんばなし)をうんと長くしてからカモ汁を出しました。
村長接待吉四六去屋肚後,嗙雞胲講,佢捉鴨子个時節有幾勇,像麵線恁長,當久正兜鴨仔湯出來。
(やれやれ、やっと食べられる。・・・おや)
(好了,好了,野鴨湯好食了。‧‧‧唉哦)
ところがおわんのふたを取ってみると、中に入っているのはダイコンばかりで、カモの肉は小さな一切れが見つかっただけです。
毋過,等碗蓋掀開來看後,碗肚斯一矻菜頭,一細皮仔鴨肉。
「どうだね、カモ汁の味は。よかったら、どんどんおかわりしてくれ」
「仰般,野鴨湯味道好無?係好就再過食加碗。」
吉四六さんがおかわりをしても、やっぱりダイコンばっかりです。
吉四六想,過食加碗乜斯菜頭定定。
(ふん、何がカモ汁だ。これじゃダイコン汁と同じじゃないか)
(這麼个野鴨湯,摎菜頭湯有麼个無共樣?)
吉四六さんは腹を立てましたが、そこは我慢して、
吉四六心肝肚當閼,還係忍等。
「とてもおいしいカモ汁でした。おかげさまで、お腹がいっぱいになりました」
と、お礼を言って帰りました。
「當好食个野鴨湯,承蒙你,𠊎食當飽了。」
それを見て庄屋さんは、腹をかかえて笑いました。
村長看著這種情形,揇肚哈哈大笑。
「さすがの吉四六さんも、とんだカモ汁をくわされたもんだ」
「像吉四六這種人,無想著會食著這種野鴨湯。」
それから二、三日たったある日、吉四六さんがあわてて庄屋さんの家へ駆け込んで来ました。
過忒二三日,某日,吉四六慌慌張張趕去村長屋下。
「庄屋さん、早く来て下さい! おらの畑に今、カモがどっさりとまっています」
「村長大人,遽來,園肚有當多野鴨仔。」
「よし、すぐ行く!」
「好,黏時去!」
庄屋さんは鉄砲を肩にかけ、吉四六さんのあとから走っていきました。
でも畑には、カモなんか一羽もいません。
村長肩頭擎支銃仔,在吉四六後背跟等就行,毋過,園肚一隻野鴨仔都無。
「カモなんか、どこにもいないじゃないか。わしをだますと承知(しょうち)しないぞ」
「園肚一隻野鴨仔都無毋係嘎?你騙𠊎,無摎𠊎會失禮毋放你過!」
庄屋さんはすっかり腹を立て、吉四六さんに鉄砲を向けました。
村長當閼,擎銃仔對等吉四六。
でも、吉四六さんはビクともしません。
毋過,吉四六一點仔無懼佢。
「おや?あんなにたくさんいるのが、見えませんか?」
「噯?恁多在該位你無看著係無?」
言われて吉四六さんの指差す方を見ると、一本の木にダイコンが何本もぶらさげてあります。
順等吉四六手比个方向看過去,有一頭樹仔,吊等當多條菜頭。
「馬鹿者!あれはダイコンじゃないか!」
「大戇猴,該毋係菜頭咩?」
「とんでもない。あれはこの前、庄屋さんの家でごちそうになったカモですよ」
「毋係哪,該就係前幾日村長屋下煮个好食个鴨肉料理。」
「むっ、むむ・・・」
「m11,‧‧‧」
さすがの庄屋さんも、これには言い返す言葉がありませんでした。
村長連話都應毋出來。
註: カモ目カモ科の鳥のうち、比較的小形の水鳥の総称です。
註: 鴨目鴨科个鳥仔肚較細型水鳥个總稱。
ガンに似ていますが、より小形で、脚に前向きのみずかきがあり、くちばしは横に扁平で櫛の歯状の板歯があります。
摎雁盡相像,毋過較細型,腳爪向前有蹼,嘴橫扁有像梳仔樣个板齒。
河海・湖沼に生息し、世界に約70種。日本では秋に北地から渡来し、春になると北に帰るものが多いです。
在河、海、湖、濫仔絡食,世界上大約有70種,在日本,大部分在秋天會對北方飛到南方、春天又飛轉北方。
おしまい
煞咧
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